第8話
私のパパは幼い頃からあまり家に帰ってこない人だった。帰ってきても夜遅くで、私が起きる前に家を出るから顔を合わせることもない。だからパパのことはあまり知らないし、興味もない。
小学校だったかな。親の職業を調べろみたいなヤツ。それで初めてママから聞いたのが、寄生生物の研究をしている大学教授だったはずだ。
パパは朝ごはんを食べながら片手でパソコンを触っていた。仕事というのが何なのかめちゃくちゃ気になる。タイミング的にも、宮と関係しているかもしれない。
聞きたいけど、今まで1ミリも興味を持ってこなかったものについて尋ねるのは……う~ん、
「ねえパパ、仕事って何なの?」
「う~ん、機密事項とかがあるからあまり詳しくは言えないんだが、この近辺の寄生生物の調査かな。」
「……へぇ。」
パパは怪しむことなく答えてくれたが、これでは抽象的すぎる。でも、気を付ける理由としては十分だ。
ということを宮に話した。
ちなみに、ここは昼休みのトイレの中。今日も今日とて同期とかいうキスをされた直後。
「……なるほど。もうそんな近くまで来てるっていうのは想定外だな。」
宮は私の顔をじろりと見つめてくる。何か言おうとしていたように見えたが、でも結局口を噤んで、
「わかった。」
それだけ言って出て行ってしまった。本当に分からない奴だ。
トイレに居るついでに用を足そうと思ったが、さっきまで宮と一緒に居た個室でするのは変な背徳感がするし恥ずかしい。ということをパンツを脱いでから思った。
出始めた尿はもう止まらない。よく分からない感情をなんとか自制するが、多分私はめちゃくちゃ気持ち悪い顔になっていた。
その日はテニス部の練習がある日だった。というより、練習がない日ではなかったという方が近い。
そんな言い回しの言葉遊びはそんなに関係ないのだが、とにかく、その日は私と宮は別々に帰ったのだった。そして、翌日。
その日の朝はパパは居なかった。ママなら知ってそうだけど、聞くのも面倒、というか急にパパの仕事が気になっているみたいに映るのが嫌だ。
「宮は?」
「しらなーい。」
学校に着いたときのクラスの陽キャたちの会話。を遠くから聞いたらそんなことを言っていた。
宮が……来ていない?
私は宮の電話番号はもちろん、ラインとかその他SNS含め連絡手段を一つも持っていない。私にできることは、一つもなかった。
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