第6話

 午後の授業は何も頭に入らなかった。お昼は結局食べられなかったからお腹が空いているはずなのに、あの柔らかい感触が強烈すぎて何も感じられない。なんなんだよ。こんなんじゃ私はアイツのことが……

「よ。」

「……うわぁ!」

 校門を出た瞬間、宮が目の前に出てきてびびる。

「どうしたよ。なんかタイムラグあったみたいだけど。」

「……うん。」

「……ちょいちょいちょい、無視しないでよ!」

 こいつも人間臭い挙動が上手くなったなあ。ノリ突っ込みってやつか?もしかしたら既に私より会話が上手いかも。なんて思いつつ。

「何の用?」

「用っていうか……一緒に帰ろうかなって。」

 嫌だよ。一人でいるほうが疲れないんだよ。っていうか私を監視したいだけだろ侵略生物。怖いよ。なんて面と向かって言えるわけなくて。

「部活はどうしたのよ。練習あるんじゃないの?」

「あー、病み上がりだから今日は休ませてもらったの。ていうかさ、なんでテニス部の練習スケジュール把握してるの?」

 宮はニコニコこっちを見ながら聞いてきた。

「いや、なんていうか……その……」

「まあ部活がない日のほうが少ないからねー。」

「……うん。」

 恥ずかしい。死にたい。こっち見るな。


「……うん…………うん……………………いや、……………………あー」

 宮が延々とSNSでバズったネタ、テレビの話、学校の話といった内容を喋り続ける。私は適当に相槌を打ち続ける。よくこんなに話せるものだ。感心する。中身がこいつでも、やはり宮なんだろう。

 流石に学校の前で人目がある中で寄生の話はしない。話題はずっと寄生とも隕石とも無関係なものばかりだ。そういう話をしてほしかったわけでは絶対にないけど。

 本当に友達なんじゃないかと錯覚してしまいそう。家族以外とこんなに長い時間話すのは先生にガチ説教を食らったとき以来だ。


 宮が急に立ち止まる。

「アレ、覚えてる?」

「……アレ、って?」

「あの……『し』から始まって『た』が真ん中に入って『い』で終わるやつ。」

 理解した瞬間逃げ出そうとするが、宮に腕を掴まれる。口を押えられて何も抵抗できないまま路地の奥に引っ張られる。

「アレの処理、さっさと終わらせないとやばいんだよね。でも、この体じゃ体力も筋力も限界があるから手伝ってもらえるとすごく助かるな。」

「やだ。」

「……絶対研究室まで道連れにしてやる。」

「……それもやだ。」

「じゃ手伝って。どっちにしろ手伝ってくれないと腐った臭いで気づかれる。それで私が捕まったらあなたが大好きな宮川宮は帰ってこないよ。」

「ちっ……ちがっ、全然好きとかそんなんじゃないんだけど私はクラスメイトとして人類として宮がこんな状況なのは良くないなとそう思うわけで決して……」

「はいはい、いいから手伝うか実験台になりたいかどっちか決めて。」

「……………………わかった。手伝う。」

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