第4話
宮の家に入るのは初めてかもしれない。そもそも友達のいない私は他人の家にお邪魔させてもらうということ自体が初めてだ。
「あら、お友達?」
「あっ、えっ、おっ……お邪魔します!」
急に視界に出てきた宮のお母さまにびっくりして緊張して、変な声が出てしまう。
「あー、大丈夫。ママもパパも全部知ってるから。」
「全部って……?」
「あとで説明するから。こっち来て。」
宮の部屋に連れて来られた。可愛らしいぬいぐるみが数体棚の上からこちらを覗いている。全体的にお洒落で、何よりとても綺麗に片づけられている。
キスから時間がたって私の心臓は少し落ち着いてきたが、また別の意味でバクバクし始める。
宮は何の躊躇もなく服を脱ぎだす。
「えっ、ちょ、脱ぐのは……」
動揺して目が泳ぐ。
「汚れて不快だから。」
「でも、ここで脱がなくても先にお風呂とか……」
「逃げない?」
「…………」
「じゃあ仕方なくない?」
宮はそのまま「うわー、中まで染みてる」とか言いながら脱いで、ついにはブラとパンツだけになってしまう。どこに目をやればいいか分からない。
「それじゃあ、まず……私は宮川宮ではない、というところを信じてもらえるかな。」
信じられるか、と言われて素直に信じられる内容ではない。でも、これまでの出来事があったし、何よりなんとなく察していたことだった。これまでは突飛な妄想かもしれないと思っていたことが現実だった。変な感覚だ。
「そして、この宮川宮の体は……寄生されているということを信じてもらいたい。私は、昨夜の隕石によって地球に飛来した寄生生物なの。今はこの体に寄生し、その意識を乗っ取っている。」
「……わかった、信じる。信じて、どうすればいいの?私をどうするつもりなの?……宮は、戻るの?」
暫しの沈黙があった。宮……と呼んでいいのか分からない、その存在は私から目を逸らし、少し考えている様子だった。
「そうだね、先にあなたの状況を説明しよっか。さっきのアレで、あなたの中に私の一部を送り込んだ。つまり、その気になればあなたも宮川宮と同じ、意識を乗っ取ることができる。そうなりたくないなら、私に従ってほしい。」
「嫌と言ったら?」
「あなたがそのことを暴露したら、私と一緒に研究者の実験台だね。あなたの中の私も貴重なサンプルだから。私の指示をいくつか聞くだけで今まで通りの生活を送れるのと、研究材料として拘束される生活。どっちがいい?」
「そりゃあ、実験台は嫌だけど……。ゲームとかしたいし。」
「なら、私に従う?」
「……可能な範囲で。」
この辺りの会話は自分でも何を考えていたのか覚えていない。死体とか死体とか、キスとかキスとかキスとかキスとか。色々ありすぎて、いっぱいいっぱいだったのかも。
「あなたにしてほしいのは、私が人間社会で怪しまれず生活するための協力。もしかしたら分かってるかもしれないけれど、私の宮川宮のふりは完全じゃない。」
確かに、なんとなく感じていたが彼女は言葉の抑揚だとか違和感を感じるところがある。それだからといって彼女は偽物だなんて見抜くのは難しいだろうけど。
「宮川宮の記憶は把握したけれど、人間らしい感情の動きだとか細かい仕草だとか、理解しきれない部分があるの。だから、そういうところを教えてほしい。」
「……それじゃあまず、普通の女子高生はすぐに服を脱がないってことかな……。」
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