第4話 鎌倉幕府を後100年延命させる方法(その2)
では、ヒストリー・ミステリー第3話その2を始めよう。
* * *
念の為、鎌倉が何故滅びたのか、それについては、本書その1を参照して欲しい。
では、解説開始!
* * *
鎌倉幕府を100年延命させる、それには、まず私に執権を任せる事が必要だ。
更に、『無限』に『延命』は『不可能』だ。だからこその『100年』である。
では、これからその『100年』を稼ぐ方法を語ろう。
その前に、前作『鎌倉幕府を後100年延命させる方法(その1)』を確認する事。
大事な事だから二度言った。
確認したね、では始めよう。
* * *
まず、御家人達が困窮した挙句、借金で首が回らなくなった。
北条の人材劣化。
これら2つが大前提となる。
これらの対抗策として、大枠で5つ、詳細で8つ用意した。
では、1つすつ紹介していこう。
* * *
大枠
●社会構造改革
これは、頼朝公が定めた『武家政権』の『構造』そのものに『メス』を入れる。
これが、2つだ。
●経済改革
これは、頼朝公以降の『武家政権』が、おざなりにしてきた『経済』にも力点を置く。
これが、3つだ。
●軍政改革
これは、坂東武者の弱点補強でもある。
これが、1つだ。
●農政改革
これは、現在では『常識』だが、『当時』は全国に知れ渡っていた訳では無かった事だ。
これが、1つだ。
●食生活改善
これは、北条の早世が続いた理由こそ、原因だと考える。
これが、1つだ。
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詳細
●社会構造改革
・所有権と、統治権/徴税権の分離
まず、誰にでも、土地を所有する『権利』を認める。
御家人から『質流れ』になった『土地』を『自由』に『売買』して良しとする。
但し、統治権と、徴税権は、鎌倉にある。
故に、年貢米を徴収する事は、鎌倉の『権利』とする。
であるからして、田畑を潰す場合、幕府の許可を取る事。
以上を、明文化し、『おふれ』として、周知徹底する。
これで、『質流れ』になった『土地』から『年貢米』……『課税』できる。
・御家人から所領を、没収する。
まず、大々的に『検地』を実施し、現在の土地と、その所有者を調べる。
更に、『狭い』土地を持つ御家人から、土地を没収する。
その上で、『お金』で、報酬を支払う。
前述した通り、幕府の『直轄領』が、増えた為、彼等を『徴税官』として雇用する。
こうすれば、御家人を食わせていく事も可能だ。
が、欠点もある。
1つ、『銭御家人』と『土地御家人』の『二極化』が進む。
これは、明らかに『銭御家人』が、『土地御家人』より『格下扱い』される事だろう。
2つ、頼朝公から貰った『土地』を手放す事への『反発』だ。
当然、『素直』に応じるとは、思えない。故に、『没収』なのだ。
彼らが、『土地』を『質草』に入れてしまう前に、やらねばならない。
とは言え、既に『土地』を『質草』に入れてしまった者もいよう。
そう言う者達は、『負い目』がある。説得はし易いに相違ない。
さもなくば、ブン殴ってでも、断行するしかない。
ハヤト・コバヤシと、カイ・シデンが脱走した時の、リュウ・ホセの様にだ。
●経済改革
・金貨と銀貨を流通させる
実は、当時流通していた『通貨』は、『中国大陸製』の『銅貨』のみだった。
これは、日常の買い物レベルなら便利だが、『土地』とか、『美術品』を買うには不便だ。
そこで、高額貨幣である『金貨』と『銀貨』を流通させる。
当時、石見銀山を始めとする銀山は西日本に多数あった。
また、東日本では、佐渡金山、甲斐金山があり、奥州藤原氏も金山を持っていた。
そこで、それらを『幕府直轄領』とし、採掘させ、金貨銀貨として流通させる。
これで、通貨の量が増え、財政も安定する。
また、通貨の量が増えると言う事は、誰もがお金を持てる為、消費が旺盛になる。
経済も、成長する事だろう。
ちなみに、江戸時代には、金銀が通貨になっていた。
では、誰が『最初に』言い出したのか。
それは、またいずれとしよう。
・商人から課税する
これは、商売を『許可制』にする事で、実現させる。
例えば、年商1億円の『許可証』は、『1千万円』で、発行すると言う具合だ。
もし、『許可証』無くして、商売をした場合、『脱税』と見做して、『処罰』する。
但し、中小零細であれば、『許可証』は『不要』……『非課税』とするのだ。
・金貸し屋の『利息』に『上限』を『設ける』
これは、絶対必須だ。かなり『あこぎ』な、商売が横行していたと聞いているからだ。
「刀を質草に、銭5千枚貸して欲しい。」
「では、利息として、先に1千枚頂きます。」
等と言うやり取りもあったらしい。これだと、利息2割だな。
そこで、現代並みの水準、『年利8%』を『上限』とする。そう、告知する。
●軍政改革
・相模湾と、江戸湾で、『水軍』を結成、訓練させる
これは、坂東武者の『弱点』……『船上』の『戦闘』に不慣れだと言う事だ。
現に、鎌倉では、新田義貞の猛攻を守り切れなかった。
だが、海と陸から『挟撃』すれば、どうだろう。
特に、新田義貞は、引潮のタイミングを待って、広くなった砂浜を攻め込んだ。
だが、そこに海上から、弓を撃ってはどうだろう。
幾ら広くなったと言っても、相模湾の砂浜ではたかが知れている。
また、鎌倉を棄てて、『脱出』する手もある。
いっそ、大阪から『淀川』を昇って、京都へ攻め上る事だってできた。
更に言えば、海と陸からの『挟撃』は、『元寇』こそ真価を発揮しただろう。
『元』の船を、縄でくくって奪う事だってできた。
このように、『水軍』は、汎用性が高い。是非とも作りたい。
●農政改革
・大豆栽培を奨励し、補助金を出す
これは、江戸時代くらいには、『常識』になっていた事だ。
『豆』を植えて収穫した後の土地は、『肥える』。
その後で、植えた作物が、『良く育つ』。
何故か?
その問いに答える事ができたのは、20世紀に入っていた。
因みに、植物の成長には、『窒素』が欠かせない。
『窒素』を多く含んだ土地は、植物の生育を助長する。
ちなみに、『豆』は、大気中の『窒素』を取り込んで、土中にまく習性がある。
こうする事で、『次の世代』の為になる。
賢明なる読者諸君なら、ご存じだろう。稲の種もみは、『水田』にまかない。
まず、『畑』にまく。で、発芽しある程度育った所で、引っこ抜いて『水田』に植える。
その為、『畑』が開いてしまう。そこに、『大豆』を植えさせるのだ。
その為に、『補助金』を出して、『大豆の種』を各村に配布する。
さすれば、大豆を植えた土地が、肥える。翌年の稲も良く育つに相違ない。
また、味噌の作り方を教える事ができる人間……僧侶がいいだろう……を派遣する。
こうして、大豆を『調味料』にする事ができる。
これで、一石が二鳥にも、なろうと言うものだ。
●食生活改善
・玄米食の促進、蕎麦の奨励
執権早世の原因を、『源氏の呪い』などと言う者もいよう。
だが、それでは、只のオカルトだ。オカルトは、作り話の中だけで十分。
そこで、本書では論理的思考で、進めていきたい。
玄米とは、米から殻を脱穀したものだ。つまり、白米+発芽成分とも言える。
この『発芽成分』には、多量の栄養分が内包されている。
まず、ビタミンが、A、B、C、D、E、F、Kと豊富だ。
更に、ミネラルもナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛等。
勿論、タンパク質に、脂質もある。
総合栄養食だ。
しかも、稗や粟など並みの雑穀とは違い、カロリーは、白米と同じだ。
唯一の欠点は、『不味い』事だけだ。
何故、この様な事を語るのか。
恐らく、北条の早世の原因は、『贅沢習慣病』……いわゆる『糖尿病』などだろう。
考えてもみたまえ。執権の最初の3代は、長寿だった。
(前作『鎌倉幕府を後100年延命させる方法(その1)』参照)
そこで、頼朝公が、征夷大将軍になった時点の年齢を確認しよう。
初代時政(54歳)、二代義時(29歳)、三代泰時(9歳)、四代経時(未誕生)
つまり、生まれついての『執権』は、経時以降で、それまでは『成り上がり』だった。
それがどうした?
そもそも、北条氏は桓武平氏の傍流ながら伊豆の土豪に過ぎなかった。
土地も大して持っていなかった。北条時政は、自宅の庭で野菜を育てていたそうだ。
それくらい、貧乏侍だったのだ。
元々の北条氏はな。
それが、頼朝公を『神輿』に担いで決起し、日本の実質支配者にまで上り詰めた。
貧乏生活が、板についていた時政や、義時、義時の教えを守った泰時は、長寿だった。
それ以降は、グダグダだったのだろう。
白米や、魚(相模湾で獲れた新鮮な奴)、更に『酒』。
こう言った誘惑に、屈したのだろう。
そこで、玄米だ。玄米食を中心に献立を作る。極論、玄米と味噌だけでも十分だ。
しかし、玄米特有の『エグ味』を何とかしないとな。
簡単だ。水に数時間つけてから、水を棄てて、炊けば良い。
すると、玄米特有の『エグ味』成分が、水に溶けて流出する。
味も、『グッ』と白米に近づく。
後は、蕎麦だな。
蕎麦は、そもそも雑穀なので、低カロリー(白米の約6割)だし、他の栄養分も豊富だ。
ビタミンB、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、タンパク質……。
それに、蕎麦は、『二期作』が可能だ。そう、年2回収穫可能。
それに、稲と違って、水が少量でも育つ優れた『作物』だ。
ちなみに、当時の『そば』は。『そばがき』と言って、数百グラムの塊だった。
細打ちの麺は、江戸時代まで待つ必要がある。
教えてやろうではないか。麺喰いをな。
唯一の問題は、この時代まだ、『醤油』が発明されていない事だけだ。
まあ、『そばがき』自体の甘みもあるし、味噌でも構わないな。
* * *
こんな所だな。
尺もいい頃合いなので、そろそろ締めよう。
では、また……
<続く>
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