ぼくのともだち
諸星梓紗
あったかいね
おひさまがごきげんなぽかぽかのひ。
ぼくはおきにいりのくつをはいて、
たんぽぽこうえんに、はしっていったんだ。
「おはよう!みんなーっ」
おおきなこえをだしながら
こえだのとんねるをぬける。
するとたぬきくんがはしってきた。
ぼくのいちばんのなかよしさんなんだ。
「きつねくんっ、きつねくん!」
にこにこえがおのたぬきくん。
なにか…いいことでもあったのかな…
ふと、したをみると…
ぼくのだいすきなくつが、めにはいった。
ママにもらったあかいくつ。
だいじなだいじなたからもの…。
あ、もしかして…
「そのふくかっこいいね!」
みどりいろのふわふわのふく。
くるっとまわってとってもうれしそう。
こころがぽかぽかするなぁ。
「パパがくれたんだ!」
まんぞくげなたぬきくん。
わあっ、いいなぁ…
ぼくたちは、さかあがりのれんしゅうを
ずっといっしょにしてて、
このまえたぬきくんがせいこうしたんだよね。
ぼくはすぐにできるようになったから、
たぬきくんのおうえんしてたんだ。
「さかあがりがんばったもんね!」
にこにこえがおのたぬきくん。
「うんっ、きつねくんありがとう!
きつねくんのおかげだよ!」
そんなことないんだけれど、
うれしそうなたぬきくんをみてたら
なんだかくすぐったいな。
「ねぇねぇ、たぬきくん!
いっしょにさかあがりしてみない?」
ゆるんじゃってるぼくのかおが
たぬきくんにみつかりたくなくて…
はしったんだ。
たぬきくんのてをにぎって、
てつぼうのあるところまで。
「もーっ!きつねくんびっくりしちゃったよ」
ほっぺをぷくっとしておこっちゃった…
「ごめんごめん」
ぼくはたぬきくんのあたまをなでたんだ。
これはぼくのママのまほう。
ママがおこってるぼくにしてくれるんだ。
なんだかぽかぽかして…
おこってたことわすれちゃうんだよね。
ほら…
いつものたぬきくんにだいへんしん!
……っとおもったらしたむいちゃった。
「ねぇ…きつねくん…
ぼくがせーのっていってもいいかな…?」
なーんだ。
そういうことか…。
へんなたぬきくん。
そんなにしんぱいしなくていいのにね。
「もちろんだよ!よろしく!」
ぱあっとわらってくれた。
たぬきくんがえがおになってよかった。
「うんっ!せーのっ」
くるん。
ぽんっ。
「え。」
さかあがりしていると、とちゅうで…
くつがとんでいっちゃった。
なみだがあふれてくる。
きがつくとたぬきくんが
となりのいけにはしっていってたんだ。
「たぬきくんっ!?
だいじなふくがぬれちゃう!」
たぬきくんにまで…
かなしいおもいをしてほしくない…。
「きつねくんはそこにいてね!」
でも…たぬきくんのそのこえで
ぼくは…うごけなくなっちゃったんだ。
「はいっ。だいじなくつみつかったよ」
ぜんしんびしょびしょのたぬきくんが
ぼくのもとにもってきてくれた。
「ごめんね…ごめんね…」
おきにいりのたぬきくんのふく。
おちばと…どろで…よごれちゃった…。
ちがう。
ぼくがよごしちゃったんだ…。
たぬきくんのたからものを…。
ぼくが…。
ぼくが……
「あやまっちゃだめ。きつねくん。
きつねくんはわるいことしたの?」
たぬきくんはぼくのめをじっとみつめてる。
「でも…!!!」
ぼくはめをそらしちゃったんだ。
するとぎゅっとてをにぎってくれた。
あぁ。
こんなにつめたくなってるのに…。
ぼくのことをおもってくれてる。
かっこいいな。
すごいな。
「ありがとう、たぬきくん」
「どういたしまして、きつねくん」
ぼくはたぬきくんのてをにぎって
ぼくのおうちにかえったんだ。
おうちにつくとすぐにママをよんだ。
「ママあのね…!!!」
きょうあったことをママにつたえようと…
するんだけど……。
なみだがあふれてきて…
うまくしゃべれなくなっちゃう…。
そんなぼくをみてたぬきくんは…
もういちどぼくのてをにぎり、
てつだってくれたんだ。
「そうだったのね…
たぬきくんありがとうね。
ふたりともかぜひかないように
おふろ、いっておいで。」
ぼくたちはいっしょにおふろにはいった。
おふろからでると、
やさしくてあったかい…
だいすきな かおりがしたんだ。
『あかいきつね』と『みどりのたぬき』の
おいしそうなかおり。
「わあっ!ぼくのだいすきな…。
きつねくん!
ぼくはどっちがすきだとおもう?」
うーん…たぬきくんなら…。
きっとこっちだ!
「たぬきくんは…
『みどりのたぬき』がすきだとおもう!」
「だいせいかいだよ!」
やっぱりそうなんだね。
たぬきくんみどりいろもすきだし…ね!
「ぼくはね…『あかいきつね』がすき」
「きつねくんは『あかいきつね』がすき!」
たぬきくんはぼくにかぶせて、
じしんまんまんでそういったんだ。
うんっ!
ぼくは『あかいきつね』がすき。
つゆがいっぱいのあげがすき。
あったかいもちもちのうどんがすき。
「ぼくのすきな『みどりのたぬき』と、
きつねくんのすきな『あかいきつね』…
こうかんしない?」
いたずらをするときのたぬきくんのかおで…
たのしいことがおこるきがして…
ぼくは『あかいきつね』をたぬきくんに
わたしたんだ。
「たぬきくんっ!とってもおいしい!」
さくさくのてんぷらとふよふよしたてんぷら。
どっちもおいしくて…
うれしいきもちになったんだ。
そばもおつゆもたぬきくんみたいに
あったかいあじがしてしあわせ。
「でしょ!ぼくのだいこうぶつなんだぁ」
とくいげなたぬきくんにつられて
ぼくもくすくすわらってた。
「ぼくのだいこうぶつのおあじを…
たのしんでね!」
ぼくのだいすきな『あかいきつね』だって…
まけないくらいおいしいんだよ。
ぼくはじーっとたぬきくんをみつめる。
しあわせそうなかおのたぬきくんをみて…
ぼくもぽかぽかだ。
だいじなたいせつなぼくのたからもの。
それは、このあかいくつと
やさしくてかっこいいたぬきくんだよ。
ぼくのともだち 諸星梓紗 @31azusa12
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