第47話
キャンプ場を予約したって言ったけどアウトドア仲間――と言っても相手は男子大学生の方に『オレもキャンプに行くし、ついでだからお前らも車で連れていってやるよ』と言われ、これ幸いにとお願いしてしまっただけなんだけどね。予約したそこのキャンプ場って結構な山奥の湖畔のほとりで景色が最高なんで前からずっと行きたかったところなんだ。
「へ~ その人イケメン?」
「なぜイケメンなのか知る必要があるんだ? まあいいや。よくわかんないけど、かっこいいと俺は思うよ。外見で人を判断しないし、他人の言動をいじったりもしないからそういった面でもでもいい人だよ」
その人と知り合った頃の俺は今よりももっとウドの大木っぽいパットしない男だったけど、そういう俺の見た目とか行動をからかってきたことは一切なかったもんな。だからかな、あっという間にすごく仲良くなったんだよね。頼りになるお兄さんって感じなのかな?
「ねえ、八月だとあともうすぐだから明日にでも私のアウトドアグッズを買いに行こうよ」
「そうだな。一週間しかないもんな。Q駅そばのショップでいいよな。そこでバイトしているんだよ、その人」
翌朝。那由多さんはすでに出社済み、美園さんも出かけるという書き置きを残してともに不在だった。
(ご挨拶してから帰ろうと思っていたのに……。次回はちゃんとしとしよう)
昨夜は俺もまさか美穂と一緒の部屋で寝ることになるとは思っていなかったから驚いたんだけど、そしたら、まあそうなるよな、絶対。そりゃもちろん静かにしたよ。
静かにシたんだよ。言わすなよ、恥ずかしい……。
我慢? 遠慮? ナニソレオイシイノ?
「あなた達も出かけるんでしょ? つまんない! わたしだけ家にいてつまんないんですけど!」
俺たちと同じぐらいの時刻にのそのそ起きてきた美弥さんがなぜか拗ねている。出かけたければどこにでも勝手に一人で出かければいいのに。
そう口にしそうだったけれど我慢したよ。
「むぅ……。わたしもあなた達についていく!」
「え~お姉ちゃん。私たちアウトドショップに行くだけだからついてきても面白くはないと思うよ⁉」
「家に一人よりは随分マシだと思います!」
けっきょくよくわからない理屈をこねくり回されて美弥さんは俺たちと一緒に出かけることになった。
友だちいないのかな?
「余計なお世話だよ! 真司くん!」
あれ? 口にしてた⁉
かくして三人でQ駅ちかくのアウトドアショップ『ワイルドツリー』にやってきた。
「こんちは。
「おう、いらっしゃい。今日は彼女のものを揃えに来たのか?」
早速、大知さんに会えた。今日は運良くバイトのシフト日だったんだな。
「はい。この子が俺の彼女だよ」
「紫崎美穂です。キャンプ場まで連れて行っていただけるそうでありがとうございます。よろしくおねがいします」
「はい、よろしく。オレは吉田大知、こいつとはダチだから敬語はいらないからな」
旅行前にお互い挨拶ができてよかった。
「で、そっちの子は?」
「あ、そっちの女性は美穂のお姉さんの美弥さん。暇だからってついてきただけなんだ」
美弥さんもペコリと頭を下げて会釈。アウトドアショップには似つかわないかもしれないフリフリしたすごく可愛らしい空色のワンピース姿でいらっしゃる。暇つぶしにしては気合が入っていたので、俺と美穂でドン引きしたことは気づかれてないよ。
「じゃあ、何かあったら声をかけてくれ」
「りょ。じゃあ美穂あっちから見てみようか?」
「うん」
おっと商品を見に行く前に。
「あ、美弥さんはどうします?」
「わたしは勝手にフラフラしているからご自由にどうぞ~」
「(暇そうにしていたら何かDVDでも見せてあげて!)」
そう大知さんに小声で伝えて、俺と美穂はシュラフから見に行くのであった。
小一時間も美穂と俺は二人してあれこれと店内を物色して回っていたので、美弥さんのことはすっかり忘れていた。
「そういえば美弥さんは大丈夫かな?」
「大丈夫じゃない? それよりこれはどう?」
美穂も、もう少しお姉さんのこと気にかけてあげなよ⁉
「なあ、一度戻ってみようよ」
「え~ 放っておけばいいのに……。しょうがないな」
渋々ながら美穂も同意してくれたので、多分レジそばにいるであろう美弥さんの下へと戻る。
レジまで戻るとそこには大知さんと談笑する美弥さんが……。
「あれ? 早かったね? えっ、一時間も経っていたの?」
俺たちが商品棚へと向かっていった後、早々に飽きた美弥さんは大知さんに相手をしてもらっていたようだった。
「あっ、そうそう。わたしもキャンプに行くから。よろしく」
「「はあっ???」」
美弥さんは大知さんにキャンプよもやま話を聞いてアウトドアに興味を持ったようだった。
「キャンプ場についたらあなた達とは別行動するから安心して。吉田さんがいろいろ教えてくれるって言うから吉田さんのテントの隣にわたしもテントを張らせてもらうことになったの。テントは真司くんのものを貸してくれないかな?」
貸すのに否はないのでいいんだけど、安心していいのか悪いのかわかんないよ。
大知さんは紳士だからおかしなことにはならないだろうけど、ズブの素人で 『焚き火しながらお酒飲むの』とか言っている美弥さんがおかしな行動を取らないか心配だ。
「オレがちゃんとお姉さんの面倒は見るから大丈夫だよ。OKしたのもオレだしな」
「大知さんがそう言うならいいけど……」
こうしてなにがどうして気があったのかわからない二人がいいというのだから四人でのキャンプデート(?)が決行されることになった。
美弥さんに帰りの電車で、なんでキャンプに行く気になったのか聞いたけどまともに答えてくれなかったので結局はわからず終いだったんだよね。実は美弥さんが今日もこの先の夏休み中も暇すぎて俺たちに構って欲しいのかと俺は思ったんだけど、敢えて言わなかったよ。流石にそれは失礼すぎると、ね。
「お姉ちゃん、あまりにも暇だから私たちに遊んでほしいだけでしょ⁉ お姉ちゃんが友達少ないの知ってるし!」
美穂遠慮ねぇ~‼
*****
これで10万字超え。
PV伸びねえなぁ~(泣)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます