第42話

「では、ボクたちは練習に行かないといけないからこれで。また一緒に遊ぼうね! 連絡するね、美穂ちゃん!」


 二人は練習があるので報告だけして行ってしまった。


「なあ、知ってた?」

「うん。二人がお付き合いしそうだってことは希海ちゃんから連絡もらってたから。言わなくてごめんね。ナイショって言われていたの」


 ああ、うん。それはいいの。女の子同士いろいろあるのは承知しているんで……。


 ――じゃなくって。


「そっちじゃなくて、俺たちってそんなにラブラブしていたのかってほう。それにあの陽平でさえわかるレベルでこの週末に何かあったってバレているのか? 誰までバレている? クラス? 学年? 学校じゅう???」


「………そ、そうだね。ちょっと考えないとかな?」


 ピコン♪


 美穂のスマホにメッセージ着信。


 ピコン♪

 ピコン♪

 ピコン♪


 連続過ぎないか?


「なんだろう? 見てもいい?」


 俺はうなずく。


「あ…………」

「ん、どうした?」


 スマホを見て固まってしまったので、勝手にだけど美穂のスマホの画面を見てしまった。

 そこには……『美雪ちゃん』からのメッセージが。


『美穂! おまえカレシんとこに泊まったんだってな! 二泊も!』


『やったのか? 二泊もしてやってないわけないよな!』


『まあ、答えなくてもうちに美園さんが赤飯をおすそ分けに来たから察してやるよ! ぐはは!』


『耀も奥手だったけど、一度ヤッたらハマったからな! ハマりまくりだぞ! ぐひひひぃ』


『うちのクラスでも話題になっていたからな。お前らわかり易すぎだwwwww』


 うちのガッコの生徒会長はとってもお下品でした。知ってたけど‼


 それにしても、美園さん……。赤飯って。

 ああ、そうそう、『美穂が捧げたのでささげを使いました』って後日メッセージいただきました。ありがとうございます。



「俺たちそんなにわかり易いのか?」

「ううううう……。明日から学校に来れないよぉ~」




 自宅に帰ると両親と真奈美は帰宅していて、全員になにも言われなかったけどものすごくにやにやにやにやにやされてしまった。


 たぶん美穂も同じだろうな。家にも学校にも居場所がない……恥ずかしいって意味で。


 嗚呼、ちんすこう美味しい……。

 あ、本当にくまの木彫り買ってきたんだ……。




 いろいろ諦めた七月初旬。学校のどこにいても微笑ましく見られている俺たちです。


「短期のバイトをしようと思うんだけど」

「バイト? なにか欲しいのもでもあるの?」


「いや、せっかくの夏休みだから二人でキャンプに行きたいなって思って。でもいきなりテント泊は未経験の美穂には厳しいかもだからまずはバンガローからどうかなって」


 夏休み期間中のバンガローはお安くない。コテージを借りるよりは低額だけどテン泊よりはだいぶ高く付く。


「だったら私も出すよ」

「いや、最初はご招待したいって俺のわがままなんだよ」


 我が家ではバイトは非推奨だ。高校生は勉強があくまでも主でお金のために時間を割くくらいなら小遣いを渡すって方針。もちろんバイトがお金のためだけじゃないのは分かっているので禁止ではなく、あくまでも非推奨ということなんだけどね。


 両親的にも平日は遅くまで共働きで、週末は自分たちのためにも時間は使いたい。だけど子供に家事などの負担を与えているのは心苦しいってところから、家事をバイトと位置づけているってところもあるんだよな。


 でも結局は親からお金をもらっているので、美穂を招待するにはちゃんと働いたお金でって思った次第。期末考査が終わってからのあくまで短期のバイトなんだけど。


「うわぁ『カゼウラのあなた』のユウジみたい!」


 なにその『カゼウラのあなた』って。最近、美穂は俺の知らないニッチな小説から情景なりモチーフを引っ張り出してくるからわかんないよ! 今度それ貸して!


「まあそれだって父さんの会社の取引先でヘルプを頼まれて俺に話が回ってきたってだけなんだけどね」


 父さんの勤める商社の取引先の企業が棚卸しのため在庫の確認をしようと計画をたてたところPCが壊れてデータが完全に破損したそうだ。で、その企業の社長さんが商社の担当である父さんに泣きついてきたという話。相手方企業さんは小規模なのでちょっとしたコンサル業務も父さんの会社は手掛けているようなんだよね。


「その企業ってのが七月決算らしくって、他の倉庫はフォークリフトとかで荷降ろしして確認できるらしいんだけど、とある倉庫だけは人力でやるしかないんだって。ついでに人手も足りない、ということみたい」


 あまり重要ではないけど、無視は会計上できないんで頼みたいということ。基本夕方五時から九時までの四時間で期末考査期間終了翌日の七月一六日から二五日までの一〇日間。土日は午前中だけで良いそうだ。もし早くに在庫の確認が終わっても契約分の給料はもらえるっていう破格の設定。ただし絶対に途中で投げ出さないって約束。投げ出すと父さんが駆り出されるという仕組みなので俺は後に引けないんだよね。


「あとね、父さんの会社からもボーナスがもらえるらしいよ。その企業に恩を売っておきたいんだって。小規模ながら相当儲けているらしいよ、そこの企業」


 お給金は高校生に俺には目玉が飛び出るほどの一〇日で壱拾萬圓‼


 プラスボーナス、はいくらだか知らないけど悪い金額ではないっていう父さんの話。

 まあそれだけ大変な仕事で人も集まらないってことらしいけど、ね。倉庫にはエアコンはないみたいだし……。

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