第35話
土曜日の朝七時半。家族は北と南に散り散りだ……。
一家離散とはこういうことか……。違うな。ごめん……。
ムダに広い我が家にぽつんと俺一人。
「おっと! ぼやっとしている時間は無いんだった!」
二度も美穂とはアウトドアの約束が果たせなかった――一度目は他の予定で、二度目は暴漢事件で――ので今日こそはと誘ったのが自宅BBQだった。我が家の周りは住宅地といえども外れの方にあり、周りは田んぼと畑だらけだ。BBQをやったところで近所に迷惑がかからないし、周りのお宅もBBQをよくやっているのはワイワイとした楽しげな声と匂いで確認済みである。
また、梅雨時期で雨に降られたとしても無駄にでかい屋根付き駐車場がうちにはあるので無問題。
我が家では車庫と言っているけど、本来の名称は納屋だな。納屋としてはほぼ使っていないけど。
ということで、いつものみんなを誘ってみたけど、陽平と希海さんは部活動、かなえは親戚の家で法事、真奈美は修学旅行でいない。ついでに関係ないけど両親までいなくなった。
要するに俺と美穂の二人だけでBBQとなってしまった。
美穂にどうするか聞いてみたら、『問題ないよ。楽しみ』との応えを頂いたので本日予定通り決行と相成りました。
「さてと。まさか二人きりになるとは思ってもいなかったから母さんにお願いして肉をたっぷり買ってもらっちゃったんだよな。妙に気前がいいと思ったら自分たちが旅行でいなくなるとはね、想定外だよ」
もうBBQコンロなんて邪魔くさいから七輪でいいよな。二人なら十分でしょ?
「あ、その前に美穂に連絡しておこう。ポチポチ『本日から月曜日まで我が家はオレ一人なり。遠慮はいらないので、身体一つで来てください』と。送信」
美穂はうちに来るとき両親に手土産とかわざわざ持ってくるからな。親がいないなら不要だって伝えておかないとね。
ピコン♪
『わかった。お母さんを説得してくる』
意味分かんないメッセージが来た。手土産は美園さんが持たせていたのかな?
「まあいいや。準備しよう」
曇りがちでところにより雨との予報だったのでガレージ(笑)にダンボールを敷きその上に難燃シートを敷き重ねた。油ハネで駐車場のコンクリートがシミだらけにならないようにと父さんが以前用意したのをそのまま借りる。
シートの真ん中に台座を置いて防火対策をして七輪を設置する。台座はテーブル代わりにもなるのでその横に折りたたみのアウトドアチェアを二脚準備しておく。もちろん横並びで設置するんだよ。
ピコン♪
『説得した。いや、寧ろ応援されたよ。準備に少し時間をちょうだい。一時間ぐらい遅れるかも?』
ちょっと美穂は変わった子、人のことは言えないけど、なので今ひとつ要領を得ないメッセージに首を傾げる。
「でもまあ、そんなところも可愛いんだよね。『OKわかったよ。着く前に連絡してね』と、送信」
そうか、一時間も遅れるとなると一二時は過ぎちゃうな。それじゃ腹が減りすぎるから朝飯は抜こうと思っていたけど食うことにしよう。
「昨夜の残りのとんかつがあったよな。カツ煮にでもしようかな……。どうせ時間が空くなら自分の部屋もリビングもキッチンも風呂も掃除しよう。掃除担当の父さんがいないんじゃしょうがないよな。美穂もリビングに入ってもらうことだろうし」
軒先に干してあった玉ねぎを一つ適当に刻んでフライパンに投入。味付けは面倒なのでめんつゆで。クツクツと煮立って来たらアクを取り除いて、予め切っておいたカツをクタッとした玉ねぎの上に乗っける。カツが温まる程度熱が通ったらドバっと溶き卵を流し込み、蓋をする。さっと、短時間だけ強火にしたら火を止めて予熱で卵を半熟に……。
洗い物が増えるのは嫌なのでダイニングテーブルに鍋敷きを置いてフライパンのまま持っていく。ご飯は大盛り。母さんは、今日はご飯を炊いておいてくれたみたい。ありがたいです。
「いただきます」
*
ブイ~ン
ガシガシと掃除機もかける。かなえん家は猫を飼っているようで掃除が大変だって言っていたよな。我が家は何も飼っていないので適当に部屋をまあるくかけて掃除機を終わらせる。
拭き掃除も見えるところだけ。ほぼ毎週父さんが掃除しているので元々そんなに汚れてはいないんだよね。
「ぐ、洗濯してないじゃん」
洗濯もする。
父さんのものと一緒に洗濯はしてもらいたくないなどという小娘の希望はこの際無視である。どうせわかんないだろうし。
洗濯機を回している間に自分の部屋を片付けてしまう。
「そういえば、今日は誰もいないんだよな……」
自分のベッドを見下ろしてふと気づいた。
「えっと……。まさか?」
美穂のさっきのメッセージを見返す。意味がそっちだったら、一応筋が通る、かも?
「でも、応援って何だ? やっぱわかんねえや」
洗濯物をインナーテラス、要するに屋根のついたベランダに干して作業終了。
ちょっと汗をかいてしまったのでシャワーを軽く浴びたら、たぶん美穂の到着する頃合いだと思う。
「BBQ楽しみ! その後は……ぐふ」
妄想でやらしことを考えながら風呂に入ろうとしたら、浴室の出入り口に頭をぶつけた。風呂のドアのところだけ家の構造上、梁が飛び出ていてあまり高くできなかったんだよね。
これってエロ妄想のバチが当たったんだよな、たぶん。とほほ。
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