第28話

 大晦日です。

 *****



 美穂の家のリビングに制服姿で正座させられて美穂の追求を受ける我が校の生徒会長さん。

 なかなかシュールで『北のマングース』って青春小説っぽくて見ている分には面白いと思う。

 俺、当事者なんでぜんぜん面白くないけどね。


「あはは……。そうだったわ。昨日もおうちデートでね。誰も家にはいなかったんで、まあ、色々とアッチのお勉強も捗っちゃって……。そういう美穂たちもアッチ系は捗りそう?」


「なっ、なっ! なにをいっているの!!! もう出ていって! もう、もう、美雪ちゃんのばかー!」


 美穂は顔から耳から制服から見えている手も足も真っ赤にして美雪さんを追い出した。


「ホイじゃ、盛り上がりすぎて遅刻するなよ!」

「はやく行け! バカ美雪!」


 肩で息する美穂を後ろから抱きしめて落ち着くように促す。


「クスン。真司くん……。ごめんなさい。幻滅した、よね?」

「そんなことはありえないよ。ちょっと驚いたけど、それだけ。俺はどんな美穂だって大好きだから」

「真司くん……」


 ああ、このままだと本当にアッチ系が捗りそうになってしまう……。学校も休んじゃおうかな? って一瞬そんな考えも過ぎったけど試験日直前に休むわけにはいかないので我慢した。


「本当に遅刻しそうだから、行きたくないけど、行こうか?」

 俺たちは家を出る間際にもう一度だけキスをして、学校に向かうのであった。




 俺たちが付き合い始めたことをわざわざ隠すような行為もおかしなものだと思ったので、俺たち二人が教室で会話をすることはとりあえず普通にすることにした。ただ学年五指の美少女の交際発覚は男子生徒諸君の動揺を誘うには十分だと思うので、交際をわざわざ発表することといちゃつくような行為は厳に慎むことにした。


 でもさ、隣りにいるのが俺の恋人かと思うと本日の授業は何一つ頭に入ってこなかったので、どうせなら休んでも良かったなとあとから後悔したよ。話すのもちょっとぎこちなくなったしまったし……。


 ただ、放課後の勉強会の二人、陽平と希海さんだけには伝えておこうってなった。


「なんだやっと付き合うようになったのか? 遅かったな」

「おめでとう、真ちゃんに美穂ちゃん。ふたりともお似合いのカップルだね!」


「陽平、その、とか、ってなに?」

「は? お前こそ何を言っているんだ? どう見たってお前ら相思相愛状態だったじゃん。まあ、他の奴らがそれに気づいていたかまでは俺は知らないけどな」


「「えっ? えええええええ⁉⁉⁉」」

 俺と美穂は声を上げて驚いてしまった。


「美穂ちゃんも気づいてなかったの? 真ちゃんたちとあまり付き合いの長くないボクでもすぐに分かったんだけど? あれ? 本当に気づいてなかったの?」


 思い返してみると、かなえにも真奈美にもそんなこと言われたし、美穂の方も美雪さんや美穂のお母さんになんか言われていたような気がする。


 もう他の付き合いの薄い奴らにバレていなければ無問題と思うことにした。バレてないよな? ダダ漏れていたらそれは本当に恥ずかしい……。


 その後かなえも合流して来週の試験に向けて勉強を頑張った。もう一心不乱にね。




 学校を出て陽平たちともかなえとも別れ、二人きりで駅構内のカフェでまったりしている。


「今日はなんだかとっても疲れたね……」

「そうだな。今日というよりも昨日からかもな……」


「そうだね。そんな真司くんにお知らせがあります」

「何でしょう?」


 美穂にスマホを渡される。

 美穂のご家族からの謝罪文が表示されていた。

 さっきかなえと分かれる前にもかなえの母親からの謝罪文を見せられたところなんだよね。

 俺んちの両親の謝罪文も美穂とかなえに見せたけど……。


「別に謝ってほしいワケじゃないんだけどね。それぞれみんな、俺たちに嬉しいいことが起きてちょっとはしゃいじゃった、ってだけだと思うんだよなぁ」


「そうだよね。私も親とお姉ちゃんのこと怒ったけど、私と真司くんがお付き合いしたってことを喜んでくれたんだもんね」


「ただちょっとやりすぎだと思うけどね。あれって結婚披露宴みたいな感覚なのかなぁ」

「っ! あ、あ、あ、あわわあわわ……」


 美穂が突然アワアワ言い出した。どうした?

 自分が何を言ったかを振り返って、美穂と同じように俺もアワアワした。





 日時は過ぎて翌日はテスト前の最後の勉強会。

 ここで追い込まないと陽平と希海さんは赤点アンド追試で六月の試合には出させてもらえないことが確定してしまう。


「だから、ここのところは、こうなる。分かったか、陽平」


! 完全に理解した」

 本当かよ? そのセリフじゃ等々力警部しか思い浮かばないんだよな。不安しかない。


「ねえ、陽平くん。私誰だかわかる?」


「ん? 君は誰かね? って美穂ちゃん? フン」

 美穂さんや。陽平で遊ばないの! 陽平も今のセリフじゃ余計不安になるでしょ?


「コーヒー入れたよ~ 陽平はクリープ多めでいいんだよね⁉」

 おいこら、希海さんも補完するなよなぁ……。

 思わず俺は頭をガリガリとかいてしまったよ。フケは落ちてないよ⁉ 清潔大事。




 そして、とうとう明日から三日間は中間考査が始まる。

 俺と美穂は大丈夫だけど、本当に目の前の脳筋二人組は乗り越えられるのだろうか?

 でも大丈夫だろうな。


 陽平と希海さんのふたりが協力して頑張って問題を一緒に解いている姿を見ていたらそんなふうに思ったんだ。以前美穂が言っていたよな『友達同士の男女で一緒に勉強していたら、その後いい雰囲気になってやがてカレカノに』ってやつ。目の前にいる二人にもその兆しが見えるけどどうなんだろうね。



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