第24話
ついさっき恋人同士になった彼女に自宅にいきなり呼ばれ、歓待されているというよくわからない状態にされるがままになっている俺と同じく当事者なのに蚊帳の外のような扱いの美穂。
そんな状態のまま時間ばかりが過ぎていき、あっという間に高校生は外を出歩いてはいろいろ問題のある時刻が近づいてきた。
「も、もうさすがに
子供っぽくない挨拶になったけどここはきっちりとしておきたい。
「あら⁉ もう九時を過ぎているのね。ではみんなで真司さんを送りましょう。さあ男ども出番ですよぉ~」
「え⁉ あっ、大丈夫です。一人で帰れます」
そんな俺の言葉はお母さんに無視されて、お兄さんが車を用意しに玄関を出ていく。
もう断れない雰囲気だ。お兄さんには申し訳ないが、最寄りの駅まで送っていっていただこう。
*
「では~しゅっぱーつ! ほらっ、陽太郎、早くしなさい」
お母さんがなぜだか責っ付いている。
お兄さんの車はいわゆるミニバンと言うやつで七人乗りだそうだ。
で、当然運転席にはお兄さんの陽太郎さん。
二列目は俺……と美穂。
そして三列目にお母さんの美園さんとお姉さんの美弥さんが乗り込んだ。
なんで?
お父さんの那由多さんは帰り用の別の車で後をついてきている。お兄さんはこのまま一人暮らしのご自宅に直帰するようなので。お父さんの役割って……。
「まだ真司くんの自宅の場所を聞いてなかった。教えてくれよ」
「え? 自宅? 駅までじゃ⁉」
「そんなわけ無いでしょ? お家までお送りしますよぉ~うふふ」
お母さ~ん! 紫崎家による歓待はまだ終わっていなかったみたいです。
自宅の住所を教えてついでに俺の両親にも車で送ってもらっている旨を連絡しておいた。うちの親の方もお礼もなく紫崎家を返しては申し訳が立たないからな。親からは『わかった。失礼のないように』とだけ返信があった。やけにあっさりしているのが怪しい気もしなくもない。
あれでいてかなりイベント好きだからね、うちの親は。でもさすがに着く頃には夜一〇時過ぎだし、日曜日だし、節度は保ってくれるだろう。
車の中でもあれこれとお母さんやお姉さんに質問されまくったけど、しばらく車に揺られると急に眠気が……。となりの美穂を見るともううつらうつらしている。今日は早起きして張り切っていたせいで俺ももう意識が――。
「――――。おーい?」
肩を揺すられるような感覚。
「おーい、真司くんや、着いているぞ? つっか早くいかないとうちの母さんと妹がお宅に突撃しにいってるよ?」
「えっ?」
目を開けるとお兄さんの顔が目の前に。美穂は俺の膝を枕に熟睡中。よだれが俺のジーンズにシミを作っているよ。
「あ、起きたね。俺もう帰るからさ。うちの母さんと美弥のことよろしくね。ちなみに父さんも連れて行かれているんで美穂も連れて行ってね」
寝起きのため霞のかかった頭で言われたことをなんとか噛み締めて理解しようとする。
どうも我が家に到着した途端に美穂のお母さんとお姉さんの二人は我が家に俺たちを車中に置いたまま向かっていった模様。その際後から別の車でついてきていたお父さんも一緒に連れて行かれたようだ。
無人の美穂のうちの車が確かに置いてある。もう一台知らない車も置いてあるけどあれはなんだろう?
「あと、ありがとうな」
「え? なんでしょう」
「美穂のこと。こいつ一見みんなと仲良くしているようで案外と無理してんだよな。真司くんと一緒のこいつは本当に家族と一緒のときと変わんないから、相当君に安心しているんだと思うよ。だからかな。おれも安心した」
それだけ言うとお兄さんは帰るというので俺は美穂をおぶって車を降りた。
車のエンジンを掛けると最後に「またね!」と爽やかにお兄さんは帰っていった。
お兄さんが俺のこと信用してくれたのは本当に心から嬉しかった。
あと、爽やかに帰っていったけど、今、こんな状況になった原因はお兄さんだからね⁉
忘れないよ?
玄関に入るとにぎやかな騒ぎ声がする。玄関からみて右側にあるリビングじゃなくて反対側にある八畳ずつの続き間の方からだ。
嫌な予感がしたので美穂を背負ったままその続き間の襖をそっと開けてみた。
宴会してた。
うちの親二人、美穂の親二人にお姉さん、あと知らない小柄な女性一人の六人。
「あっ、ご両人こんばんはぁ! おきゃえりなしゃぁい! かなえの母の
ザ・酔っぱらいである。
「あ、どうも。かなえさんにはお世話になっています」
「うっそーん! お
うん、酔っぱらい。
さらっと全員を見渡したけど全員すでに飲酒されていますね? もう帰れないよね?
栞さんも美穂んちの三人も……いいのか?
「今日はあなた達ふたりのめでたい日なんだからキニシナイの! もう私たちは明日の仕事は休むことにしたから……」
「「「「「「無問題」」」」」」
母さんの音頭に酔っぱらい六人の声が揃った。
いい年をした社会人がそんなのでいいのだろうか? 大学生の美弥さんはそんなものかもしれないけど。
俺は美穂を背負ったまま、襖をそっ閉じしたのは言うまでもない。
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