第19話
何周か回ってわかったことがある。美穂と真奈美はほぼ互角の実力者。対して俺とかなえは全くの初心者扱い。俺はそこまでひどくはないと思うんだけど強者二人に言わすと『雑魚扱いで無問題!』だってさ。ひどくない? その言い方……。
そこでチーム戦となった。強者と弱者の組み合わせでが行われ俺と美穂、真奈美とかなえがチームとなった。
「足を引っ張らないでよね! 真司くん」
「さっきからひどくない? ねえ、ひどくない?」
まあ笑っているから冗談で言っているだけなんだけどね。たのしい。
「ちーむマナカナはおにおね団をぶっ飛ばします!」
「そうっす!」
なんだよ、その『おにおね団』っつーのはさ。
「ん? わかんないの? おにいちゃんとおねえちゃんだからおにおね団だよ?」
「そんなのはわかってる! なんつーネーミングセンスなんだって話だ!」
「なんだ、褒めてくれてたんだ。ありがと、おにい」
もういいや。
「おにおね団もスタンバイしましょ!」
美穂は気に入ったのか? うん、たのしい。
作戦を各々のチームで策したりしての一対一の対戦をしばらくやってダレてきそうなところで無茶苦茶なバトルを四人でまたやったりで気づいたらもう二時間以上時が過ぎていた。
「そろそろ勉強をやっておけよ?」
「そうだね、おにい。少しはやっておいたほうが無難だと思う」
無難レベルでいいのか?
「そういえば聞いていなかったけど、マナは何処の高校を受験するんだ?」
「えっ、いっていなかったっけ? おにいンところだよ、ウチも行こうとしているのは」
「マジで?」
「マジで。だからよろしくね。せ・ん・ぱ・い♡」
両親も知っていて俺だけ知らなかった模様。とっくに伝えていたつもりだったとは本人の弁だが多分嘘だな。俺を驚かせようとしてだけだと思う。また、真奈美のいたずらにまんまと引っかかってしまった。
「あはは! 真司くん。後輩が妹になって実の妹が後輩になるんだね! こりゃぁ稀有な経験ですぜ、旦那」
美穂が悪人風に煽ってくるが呆れたほうが先なのでため息しか出ない。
「ねーねー、ちょっと違うよ、美穂おねえちゃん。おにいはおねえちゃんの旦那になるんだからその呼び方はおかしいよ! だんなさま♡って感じがいいかも⁉」
「「なーなーなーにをっ」」
俺と美穂は同時に叫ぶ。
ニヤニヤ笑う真奈美とかなえ。
顔を真っ赤にしてあたふたする俺と美穂。
「余計なこと言っていないで勉強をさっさと始めろっ!」
照れ隠しに語調を強めてお子様二人に指示すると「へーい」と二人は気のない返事をするがゲームを片付け教科書を取り出したのでちゃんと勉強はするつもりのようだ。
「おにいはとりま用事ないから、部屋で漫画でも見てて。あー、夕飯はカレーがいいな、辛くないやつ」
真奈美にそれだけ言われると俺と美穂はリビングを追い出された。
カレーなら家にある材料でできるから買い出しは必要ないな……じゃ、ねえよ!
美穂を俺の部屋に入れるのか? 大丈夫か? 昨日掃除と片付けは完璧にしたから大丈夫だとは思うけど、そういった物理的な環境のことじゃなくて、俺の精神の方が大丈夫なのかが心配だ。
「ふふ。男の子の部屋に入るのってお兄ちゃん以外では初めてだなぁ~」
俺の内心の焦りを他所に美穂が俺の部屋に入るのは既定なようだ。
「まあ、大して面白くもないけどね……」
動揺していることを悟られないように努めて平坦に話した。
ドアを開けると俺の部屋。二階の東南側で一〇畳ある。和室じゃないけど。
部屋の隅にはダブルベッドが鎮座している。これには深い意味はないんだよ。身長が一八〇もあると普通のベッドでは足が飛び出るんだ。だからダブルベッドの対角線上に寝ているだけなんだよ。
「あはは。そうなんだ。背が高いって大変だね」
「たぶん陽平もおんなじだと思うよ。この家をリフォームしてもらうまで鴨居とか吊戸棚とかにしょっちゅう頭をぶつけていたもんな」
今住んでいる家は、古民家とまではいえないけど田舎ゆえの無駄に広い住宅を親が親戚から格安で買った。数年前にフルリノベーションして低かった天井も梁も高くなりやっと頭をぶつけることはなくなったんだよね。全室和室だった部屋は一階の続き間の片側だけを残し全てフローリング化してある。フローリングの部屋にふすまがあるのもご愛嬌だ。
美穂は天井が高くて広いベッドで寝られて羨ましいと変なところに感心していたけど。
「真司くんの匂いがするね、お部屋」
「あ、悪い。臭かった? 窓を開けようか?」
「ううん、違うよ。いい匂いだなって思っただけ」
「……」
なんか昔聞いたことがあったな。
いい匂いだと感じる異性は遺伝子レベルで相性がいいって。
真奈美が父さんを臭いと言うのには近親姦を防止するDNAの戦略がうんぬんかんぬん。
変に意識しちゃうからそういう事言わないで欲しい……。
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