第18話

 駅まで美穂のことを迎えに行きたかったけど思いの外料理に手間を掛けてしまい泣く泣く迎えは真奈美一人に任せた。


「「お邪魔します」」


「いらっしゃい。美穂、かなえ。まず手を洗ってもらったら、そのままお昼ごはんにするつもりだけど問題ない?」

「大丈夫だよ真司くん。なんだかすごくいい匂いがするね!」

「おにいちゃんすごいです! 早く食べたいっす!」


 今日のかなえは普通の服装だった。清楚な感じによくまとまっていると思う。もしコメントするならばそんな感じ。この前見たゴスロリの格好はなんだったんだろう?

 美穂は初夏のお嬢様って感じなんだけど伝わるかな? 濃い青系統のワンピースがかわいい。もし着ているのがよれたTシャツ短パンでも美穂なら可愛いと思うけど。



 今日のお昼ごはんのメニューはこちら。


 スープはオニオンコンソメスープ。ドライパセリを散らして見た目もきれいに。

 プレートには真ん中にハンバーグ。その横にはナポリタンスパゲティが少量くるっと丸めてある。ハンバーグを挟んで反対側には小さいオムライスが黄色い小山を作っている。

 付け合せはフライドポテト。さくっと食べてほしかったので調理の最後に揚げたてをプレートの端に添えた。

 サラダはコブサラダ。トマトとサニーレタス、アボカドで彩りもバッチリ。グラッセもつけようと思ったけどかなえがどうも人参嫌いなようなのでやめておいた。せっかく作っても食べられずに弾かれてしまうのは悲しいからね。ただしピースが小さければ平気なようでそこは良かった。他の料理にも人参は少量だけど使っているから。


「旗はウチが作ったんだよ!」

 オムライスの上に楊枝でできた旗が刺さっている。真奈美はそれを自分が作ったと自慢しているわけだ。それ自慢になるのか?


「これって真司くんが全部作ったの? すごくない?」


「ウチもこれくらいは作れるけど、ここまで手際よく全部をいっぺんに作るのはできないんだよ。美穂おねえちゃん、うちのおにいはお買い得だよ!」


 おいやめろ。いや、もっと言ってもいいぞ……。


「おにいちゃん、おいしいっす。とってもおいしいっす」


 なんでかなえは涙ぐんでいるんだよ?


「おとうさんと幼稚園の頃食べに行ったレストランの思い出っす……」


「……ん、そっか。それは良かったな。俺の飯で喜んでもらえるならいつでも作ってやるぞ」

「うれしいっす……。それにしても、ほんと美味しいよ、おにいちゃん」


 ちょっとしんみりしたけど概ね楽しくわいわいがやがやしながら食事を楽しめた。



 食後のデザートは手作りのプリン。


 これは昨夜真奈美が作っていた。『旗だけじゃなかったんですよ』と中学生にしては立派な方だという胸を張っている真奈美はかなり自慢げだ。横にいるかなえの冷たく悲しそうな視線がお胸ソコに刺さっていることには全く気づいていないようなので注意するように……。


 そんなことがありながらもプリンは真奈美の得意なお菓子だけあってみんなに好評だった。


 食後の洗い物はやらなくてもいいって言うのに美穂とかなえがきれいに片付けてくれた。



 食休みをしたら予定の試験勉強をする。


 するんだよな?

 なんでゲームの画面がテレビに大映しなのかな?


 カートなゲームとか、大乱闘なゲームがすでに用意してあるんだけど?


「おい、勉強はどこ行ったんだ?」

「おにい、せっかくみんながうちに来てくれたのに勉強だけなんてつまらないよ!」


 いや……。勉強するが目的だろ? 勉強するって名目で集まって、結局、勉強が遊ぶためのダシになっちゃってるじゃん?


「おにいちゃん……」

「真司くん……」

「おにぃ~」


「……わ、わかったよ。一時間だけな」

 折れた。あっさり折れた。だって、俺も遊びたいし。


 去年は我が家に受験生がいなかったので両親と四人で対戦ゲームをよくやった。思春期の反抗期真っ只中の真奈美のご機嫌を取るために父さんがコントローラーも四つにして本体と対戦ゲームソフトを買ってきたんだ。


 何をやっても真奈美か母さんが勝って、俺か父さんがドンケツだと決まっていた。俺にゲームのセンスがないのはよく分かったけど、面白ければそれでいいって精神で楽しんだもんだ。


 一緒にゲームで楽しんで家族団らんできた父さんも満足そうだった。


 真奈美が受験生になったんで最近はゲームもやらなくなり、あの熱狂的な家族団らんはなくなったけど、真奈美に無視されなくなったから御の字だと父さんは言っていたな。それでいいのかな? 父心はよくわからん。


 閑話休題。


 俺が思い出に耽っている間に真奈美がせっせとゲームの用意をし終えていた。


「美穂おねえちゃんはやったことあるみたいだけど、かなちゃんが初心者だからカートのほうね! 最初はただ走るだけで妨害とかナシで! みんなOK?」


 さすが我が家のゲームマスター。もンのすごく仕切っている。


「いいよ! マナちゃん上手らしいけど私だってお兄ちゃんとお姉ちゃんに鍛えられているから強いからね?」


「フフフッ。いっているがいいよ。おねえちゃん、あとで吠え面をかかないでね!」


「おいおまえら? かなえがついて行ってないぞ?」


「うん、アタシは大丈夫。アタシはおにいちゃんといっしょにやるっす。よろしくね、おにいちゃん!」



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