第16話
土曜の午後、我が家のそれなりには広いかもしれないリビング。要るんだか要らないのだかよくわからないもので部屋の中はごちゃごちゃしているせいで広く思えないんだけどね。
特に部屋の隅には冬場以外には不必要なものが置いてあり、今の時期はカバーをかけて飾り棚のような状態になっていたりする。両親が出かける度に変なオブジェをお土産に買ってくるんだけど、この部屋はそういうのでいっぱいなんだ。だからって散らかっているわけじゃないんだけどさ。
「おにい、これわかんない」
「それは、こうだ……わかるか?」
「あ、そうなんだ。わかったよ、ありがとう」
リビングのローテーブルで二人して勉強中。それぞれが部屋にこもって勉強をするのはこの兄妹は性に合わないらしい。
ピコンッ♪
スマホを手に取る。ニヤニヤ笑ってなにか入力してテーブルの隅にスマホを置く。
ピコンッ♪
スマホを手に取る。ニヤニヤ笑ってなにか入力してテーブルの隅にスマホを置く。
ピコンッ♪
スマホを手に取る。ニヤニヤ笑ってなにか入力してテーブルの隅にスマホを置く。
「なあ、マナ。うるさいんだけど?」
「じゃあ、音消すよ」
「でも振動するだろ? あとニヤニヤするのやめろ」
「う、うるさいな。え? ニヤニヤしてた?」
無言で頷いておく。
ニヤつき顔を見られたのが恥ずかしかったのか真奈美はほんのり頬を赤くしている。
「相手は誰だよ? ガッコの友だちか?」
「……ううん。違う、よ?」
「なんだよ、その含みは」
「えへ、違う学校の……おと「びくっ」……ふふ。おにい、今びくってしたね?」
「し、してないし……」
してないよ。ほんとにな……。したけど。おと、この子。じゃないよな?
「大丈夫だよ。おともだちのかなちゃんだもん。おとこの子じゃないから安心して」
「ほっ……男じゃないのか(ぼそっ)。えっと、かなちゃんって、かなえのことか?」
なんだよかった。よかった? なんだこの気持は? まあいいや上手くごまかせたっぽいし。
「(ごまがせていないよ! ニヤニヤ)かなちゃんも勉強しているみたいなんだけど一人だから寂しいんだってさ~」
「そっか。じゃあ一旦勉強は休憩にして、かなえの話し相手をしてやればいいだろ?」
「うん、休憩にする! おにい! 紅茶入れて! ウチはオレンジペコね!」
なんだよ急に嬉しそうにしやがって! なにがオレンジペコだよ。おまえの舌で味の違いなんかわかるのか?
かく言う俺はアールグレイにするけどな。味? わ、わかるよっ!
紅茶を入れたら通話している真奈美にカップを渡して俺は自室に向かう。なんか盗み聞きしているみたいで電話している人の横にいるのって俺はあまり得意でないんだよね。
部屋に置きっぱなしにしておいたスマホを見てみると美穂から三件、陽平から五件もメッセージが入っていた。どっちもテストが終わってからの遊びについてで、まったく気が早くって困るよな。そんなこと言っていても俺もおんなじで昨夜はラウ10のホームページを見まくっていたりしたんだけどな。
美穂と陽平とのメッセージのやり取りをしている間にいつの間にか一時間も過ぎていた。入れておいた紅茶はカップに半分残ったまますっかり冷めている。それをグイッと飲み干して慌てリビングにいったら、ポテチ片手にだらしなく寝そべってかなえと通話している真奈美が転がっていた。
「あ、おにいが戻ってきたから切るね。いつまでも話していたらウチが怒られちゃうから」
そして『じゃあ例の件は話しておくから』と言い通話を切る真奈美。
「おい、マナ。それじゃ俺が悪いみたいないい口だよな? あとなんだ、例の件って? また悪巧みか?」
「なんだよ~ また悪巧みって! ウチが何回も悪いことしているみたいじゃないかぁ~」
してんじゃないか! 俺の個人情報をかなえにリークしまくりだろ?
「ふぅ……。で、なにをするんだ?」
「話が早くって助かるよ、おにい」
ったく。ほんとなにモノだよ。
「早く言え。勉強始めるぞ? 今日の分はマナもやっておかないとまずいんだろ?」
「うへ~現実に戻さないでよぉ」
「最初から全部、現実だ。もういいから早く言え」
無駄口叩いている間にもどんどん時間ばっかり過ぎているぞ? 言わないけど真奈美のために勉強しているようなもんだからな? 俺のほうは陽平たちを教えているおかげて中間考査の出題範囲はもう二周ぐらい復習は終わっているんだよ。
「あのね。あした、かなちゃんがうちに来るって。一緒に勉強しようってお願いされたからOKしたよ。おにいも一緒だからね!」
「は? はぁ? なんでぇ⁉」
「いいじゃん。かなちゃんのおにいちゃんなんでしょ? おにいは」
別に一緒に勉強しに真奈美のところへ来るのはいい。もうしっかり友だちみたいだし。
でもなんで俺まで一緒なんだよ? かなえのおにいちゃんでしょってどんな理屈だよ⁉
「マジかよ……」
「かなちゃんね、あしたもお家に一人きりなんだって――」
真奈美はかなえの家庭の事情まで聞いているそうだ。知り合ってそんなに日数も経っていないのにだいぶ踏み込んだ話をしているな。
え? おにいちゃん繋がりの妹繋がりだから?
「うん。もう俺は何も言わないから続きをどうぞ……」
かなえの家は母子家庭。
父親とは離婚じゃなくて死別だそうだ。
かなえがまだ幼稚園に通っていた頃に交通事故でお父さんは亡くなったそうだ。
******
少しでもイイなと思っていただきましたら⭐を押してください!
ぜひとも感想と💖もよろしくおねがいします😻
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます