第12話

毎朝更新。

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 翌日の日曜日、俺は母さんと真奈美に丸一日からかわれ続けてヘトヘトになった。昨日いつの間にか真奈美は写真を撮っていたようで美穂とかなえの姿に母さんは年甲斐もなく『カワイイカワイイ! どっちが義娘? えっ、どっちも⁉』とキャアキャアとうるさかった。もうなんとでも言っていろと俺は無反応を貫き通したぜ。ちなみに父さんは今回も不干渉だった。かなりこっちをチラチラ見ていたし気になっていた様子だけど……。


 美穂の方も、内容こそ教えてはくれなかったけど、例の生徒会長さんに俺と同じようにからかわれていたようで月曜の朝に教室で顔を合わせたときには二人してため息をついてしまったくらい。



 あの会長のことだから俺を美穂の彼氏だと言ってからかったんだろうと思う。そんなニュアンスのこと言ってた気がするし……。まだ、そうまだ、俺と美穂はカレカノではない。俺はそうなりたいと思っているけど、美穂はどう思っているのかわからない。一緒に出かけたり手を繋いだりしたんだから悪い感じではないと思いたい。

 ただ一緒にでかけたり手を繋いだりするぐらいは友人関係でもよくあること、とネットで見たので俺の勘違いの可能性はゼロではないんだよな。


 美穂は俺の顔を見てため息ついていたし。


「あれって、どっちの感じでのため息なんだろう……」


 俺みたいに嬉し恥ずかしさで疲れたのか、それとも思ってもいないことで囃し立てられてうんざりしてか?


「おう! 朝から辛気臭い顔してんじゃん、どうした? 腹でも痛いのか?」


 美穂が女友達のところへ行ってしまったあと、陽平がやってきて人の肩をバンバン叩いてくる。


「腹は痛くないけど、お前に叩かれている肩がとてつもなく痛いぞ⁉」

「そっか、それは良かった。で、早速だけど聞いてくれ」


 毎度のことだけど、マジこいつはマイペースだよな。


「はいはい。スリーポイントシュートが一〇連続で決まったとかか?」

「なんだそれ? 一〇回連続ぐらい普通だぞ? そうじゃなくって、中間考査の試験対策施ヶ内勉強会を今日から始められないか、というご相談だ!」


 施ヶ内勉強会? なんだそれ。それより試験は五月二六~二八日だったはず。部活の中止期間はその前の一週間だったと思うけど?


「え、別にいいけど、なんで?」

「……あ~その。おれ一年の最期のテストボロボロだったじゃん? そのせいで今回は絶対に赤点ナシじゃないと試合にも練習にも出させてもらえなくなりそうなんだ。とゆっか……もう今日から試験終了まで練習禁止にされた」


「ああ…………。なっとく」


 一年の最期のテストの結果なんてその時は知り合ってもいない俺が知る由もないけど、確かこのまえ陽平に伝えられた学年順位は下から数えたほうが断然に早かった。


「そこでそこまで納得されると悲しいものがあるんだけど? って言っている余裕はないか。センセイお願いします!」


「わかったよ。今日の放課後からな。図書室に勉強したい教科書とその他資料を持って集合な。それと岬さんはどうするんだ?」


「岬は――実は俺と五つしか学年順位が変わらない。まあそうなると当然ながら部活の練習停止措置をうけたことになるな……」


「……そっか。了解」

「じゃ、よろしくです、センセイ」


 陽平はそれだけ言うと自分の席に戻っていった。

 なるほど岬さんは見た目もかわいいしバスケも上手いらしいけど勉強の方はイケてないんだな。


 まるで女子版の陽平じゃないか? まあ似た者同士だから一緒に勉強しようって思ったのかもしれないしな。とはいえ教えるのは俺だけど。あと美穂もか!


 そうなるとこのことはあとで美穂と相談しないとな。件のため息は俺と同じく恥ずかしかったせいだとポジティブ(?)に考えてこれからに活かしていこう。どうやって活かすとかは考えない。どうせ考えたってわかりゃしないんだから。美穂に直接聞く勇気もないんだし悩むだけ無駄だと思う。


 そんなことよりも美穂とよく話すようになって一年になるその日には、どの道どう転ぼうと俺は彼女に告白をするつもりなんだ。だからそこに向けて良い関係を更に構築していくのみなんだよ。


「そうやって納期を決めておかないとズルズルと逃げそうだもんな、俺……」

「ん? なにか注文でも受けているの? 納期って」


「でゅわっ‼」

 俺の席のとなりから声をかけられた。要するに美穂だけど。


「ふふっ、慌て過ぎだよ。しん、じゃなかった。施ヶ内くん」

「……ごめん。えっと、なんでもないよ。あはは」


 焦った。考えていたことが思わず声に出てしまっていたようだけど、声にしたのは最後の方だけだったよな? 最近考え事が口に出ることが多い気がする。気をつけておこう。


 美穂は首をかしげて不思議そうな顔しているけど、俺はスマホを指差してごまかした。


『さっき陽平から今日から勉強を教えてくれって急に頼まれてどうしようかって考えてた。岬さんも一緒だって言うし』

『あー、なる。そういうことなんだね。いつまでにどこまで教えられるかってことでしょ?さっきは急に声をかけてごめんね!』


 上手いことごまかせた、よな。勝手に勘違いしてくれているようだし……。


『うん。それで今日の今日だけど美穂も教えられる? 主に岬さんの方だけど』

『無問題! バッチコイだよ』


 いや、あいつらバスケ部員だしそもそも勉強なんだからバッターですらないぜ? 美穂は意味わかってないで最近覚えたての言葉の誤用をしているんだろうな。


 ちょっとかわいいって思ってしまい顔が熱くなったけど、ちょうど担任が教室に入ってきたので誰にも俺の赤い顔を見られることはなかった。


 でも美穂とは普通に会話できた。なんかすごくホッとしたよ。



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