第2話

本日二話目です。三話連続投稿です。

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 ――おっと。思考が逸れたが美穂のことだ。


 見た目は可愛い。そういうのがどうでもいいって思っている俺から見ても可愛らしい顔立ちだとは思う。

 亜麻色の長い髪にくりくりのアーモンドアイ。すっと通った鼻梁に整っていながらもポテっと可愛らしい唇。体躯は……まあ普通だと思う、多分。

 少し女の子にしては一六五センチの身長は少し伸びすぎだと本人は気にしているみたいだ。一八〇センチの俺と並ぶと目立たないけどな。スタイルは特に巨乳とかその逆とかもないみたいだし、運動神経もスポーツ万能でもないけど鈍くさくもない、みたいな? 勉強の方も俺とさしてレベルは変わらない。少しだけ美穂のほうが成績の順位は上だけど、どのみち二人して学年の上位以内であることには変わりはない。

 見た目以外は平凡な女生徒と言ってもいいぐらい。


 しかしそのキャラが陰か陽かと問われれば美穂は陽側だと誰もが思うだろうし、本人も一応陽キャラ風な振る舞いを普段からしている。そこが俺とは少し違う。俺も陰側ってわけじゃないけどね。


 まあ、美穂の実際は陽側とはちょっと違うからあくまで振る舞いなんだけどな。


 本人曰く、

「もうね、男性アイドルがどうしただのドラマに出ているイケメン俳優がア~したコ~したとか? 誰それ? って感じ。あとファッションとかお化粧も無駄にお金かかるし、本当は興味が薄いんだよね、無いわけではないけどね。ああいうのは単純に友達付き合いなんだよね。そういう付き合いは嫌じゃないし彼女たちのことは好きだけど話している内容は少しめんどくさくも感じるの」

 ということらしい。ドライね。


 事実、彼女の趣味は読書で、その対象というか嗜好は恋愛物語全般なんだけど、アイドルや人気俳優の演じるそれではなくて、どちらかというと小説>>漫画>アニメ>>映画>>>>>TVドラマの順序だと以前聞かされたことがある。役名ならわかるが演じている俳優個人になぞ興味ないそうだ。趣味の中では読書はどちらかと言うと地味な方だな。だけどキラキラしたものは小説の中で見つけているので彼女的には十分なんだって。


 さて、なんで学校でもデカさで目立つ割にはさしてパットしない俺が学年五指に入る美少女のそんな内面を知っているかというと案外と単純だったりする。

 美穂とは高校一年のときから一緒のクラスで、一年のときも二年の今も同じ図書委員なもので委員同士故によく話すようになったから。残念ながら小説のようにドラマチックな出会いとかはないんだよね。


 俺はラノベみたいななんてシチュエーションは現実的に滅多に起きるとは思ってはいないんだよね。あんなもんありえないじゃん?


 だけど美穂はそういうようなシチュエーションにちょっとあこがれを持っていたりするみたいなんだよね。あれってキラキラなのかね?

 ハーレクイン・ロマンスを愛読書とのたまうような彼女なのでそれもありなんとは思う次第だけどな。ハーレクインなんて女版なろう小説じゃん⁉ それって俺の偏見なのかな? 一冊だけ美穂に借りて読んだけど異様なほどの砂糖成分で構成されているもんだから胸焼けしちゃって胃薬代わりにSF小説を後から読んだぐらい。


 そんな感じで本好きな彼女と実は本好きな俺は同じ図書委員で誰も来ない図書室でどの小説がいいだのあの表現は痺れただのと話をしていたので意外と仲が良かったりするわけだ。


 美穂は美少女だけあって男子生徒からの誘いも多いらしいが一切合切を断っているみたいだし、告白されたって話も一度や二度じゃないって聞くんだけど彼氏ができたなんて話はまったく聞かされていない。そもそもほぼ毎日俺と一緒に放課後を過ごしているのだから彼氏はいないのだろう。


 それにしても俺のことは男として見ていないのか、それとも本友達としてしか認識していないのか? もやる。少しだけな。すこしだけ……。

 ただ学校内で俺だけが美穂に心を許されている存在だと思うとすこし浮かれる。少しだけな。でもな……。



 地獄の六時限授業が終わって放課後。今日も今日とて図書室に向かう。

「疲れた……。癒やされる本ってなんだろう? 今日は美術書でも眺めようかな」



 本来なら持ち回りで各図書委員が当番で受付をするはずなんだけど、ほぼ一切来訪者のない図書室なんかにいてもツマラナイし、どうせ閑職だろうって決めつけて図書委員になったくせに当番に出てこない奴らが多数いる。確かに来訪者ゼロ~五人とかはザラなので受付にいても仕方ないような気分になるのはわからなくもない。


 そこで部活はやってない、バイトもしてない暇な時間が有り余っている俺がそいつらの代わりに当番に出ていたら、いつの間にか同じ図書委員だった紫崎も一緒に当番に出るようになっていた。


 でも最初の頃は、同じクラス同じ委員だと言っても特に話をすることもなく各々黙々と書架から好きな本を取ってきては受付の椅子に座って本を読んでいただけだったんだ。



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