第13話「昼下がりの、冒険者ギルド(1)」
森の奥にあった魔物の生息地『オークの集落』で魔物を倒しまくり、山のように大量のドロップアイテムを手に入れた私たちは、すぐにエイバスの街の我が家へ帰宅。
ヴィッテは帰宅するなりお昼寝モードに突入していた。なんだかんだ疲れたんだろうね。
私とスライで相談した結果、入手したアイテムのうち、試しに一部だけ本日中に売却して様子を見ることに。
持ち運ぶのが大変そうな大型の斧や剣や鎧などはいったん保留。そこまでかさばらないアクセサリー類や小型の石っぽいアイテムを中心に、持てるぶんだけリュックサックに詰め込んで、私1人で中心街へと向かう。
スライに道を教えてもらって書いたメモを片手に歩いていくと、それっぽい看板がかかった建物を見つけた。
「……ここが冒険者ギルドかぁ」
冒険者ギルドは、剣と魔法のファンタジー作品では定番といっても過言じゃない施設だよね。
ドアにかかる小さなプレートには “営業時間:8時~18時” という文字。
「今は15時過ぎだから営業中だな……よし」
さっそく入ると、割と広い室内にはたった4人しかいなかった。
2人はテーブル席に座って会話中。1人は大きな掲示板っぽいボードの前で張り紙を整理している。あとの1人は窓口っぽいカウンターの向こうで何か作業をしているみたい。
「えっと、スライが言ってた “窓口” ってあれかな」
スライからは「自分が知っている限りでは、売却希望だと窓口に伝えればOKなはず」的なことしか言われてない。詳しくはカウンターの人に聞くしかなさそう。
「すみません。アイテムの売却ってここで大丈夫ですか?」
「はい、受け付けております」
営業スマイルで対応してくれたのは、カウンターの若い女性スタッフ。
「もしかして冒険者ギルドのご利用は初めてでしょうか?」
「そうです」
「でしたら当ギルドのサービスを簡単にご案内させていただきますね。冒険者ギルドは、冒険者の皆様の支援を目的とした組合です。主な業務は『
女性スタッフの説明によれば、この窓口には多くの
剣と魔法のファンタジーだと『冒険者=猟師+傭兵+何でも屋』が王道の定義っていう印象。話を聞く限り、この世界の冒険者もそんな感じだと思ってよさそうな気がするな。
なお
ただし必要とする店へ卸す前提で買い上げる関係上、需要と供給の状況で買取価格が変動したり、需要がないアイテムは買取不可だったりすることもあるみたい。
他にも近隣の魔物の出現状況をはじめ冒険者が活動する上で必要とする様々な情報の提供や、私たちの世界の郵便みたいなシステムであるギルド便の運営も行っているとのこと。
「……説明は以上となります。それでは、換金希望のアイテムをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「えっと、そこそこ量があるんですけど……」
「ご心配なく。カウンターの上に並べていただければ、こちらで【鑑定】して買取希望価格を計算いたしますよ」
「じゃあお願いします」
言われた通りリュックサックから1つずつアイテムを取り出して、ひたすら黙々とカウンターに並べていく。
女性スタッフは端からチェックしては何かメモをとっているようだ。
「……ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
しばらく並べ続けたところで慌てたスタッフに制止された。
「へ? でも売りたいアイテムの半分ぐらいしか出してないんですけど」
「まだあるのッ⁈ 失礼ですが、あなたまさか――」
反射的に目を見開き、何かを言いかけた彼女。
だが言葉の終わりを発することなく飲み込んでしまう。
「うそ……」
そして小さくつぶやくと、私を見つめたまま固まってしまった。
突き刺すような、
「あのっどうかしましたか?」
「いえ! た、大変失礼しました」
耐えきれなくなった私がたずねると、ようやく女性スタッフが我に返った。
ひと呼吸おいてから、彼女は再び私に目線を戻す。
「もしよろしければなのですが。この窓口ではなく、別室の『応接スペース』でお話をさせていただけないでしょうか?」
「別室、ですか……」
何か後ろ暗いことがあるわけじゃない。魔物であるスライも2号も家に置いてきたし、敵意を向けられる理由は無いはず。だけど……。
「……別室に呼ばれるような心当たり、何もないんですが?」
心当たりがない以上、急にそんなこと言われるとなんか不安になるよね。
女性スタッフは何も答えず、手元の紙に “何か” を書くと、そっとこちらへ差し出す。
そこにはただひとこと、こう書かれていた。
――あなたは、
瞬間、私は息を呑んだ。
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