時間冒険少年(自分)

@siko36

第1話(時間)

「おはよ」

午前6時40分。中学2年生の僕は誰よりもはやく教室に行き、少し薄暗いその部屋に足を運んだ。誰もいないはずの教室に一言挨拶したのには理由がある。

「今日の雅也(まさや)は一味違うね。気合いが入って見えるよ」

僕は机に話しかけた。その机の上にはひまわりが飾られている。

「お、今日も来るのがはやいなぁ、健二(けんじ)」

後ろから、まるでボディビルダーのような体格のがっしりとした体育の井上(いのうえ)先生が大きな声で話しかけてきた。

「そりゃはやいですよ先生。雅也が待ってくれてるんだもん」

少し先生は浮かない顔をしている。

「それもそうだな。まぁ、みんなの前ではあまり、あいつの名前を口にしないようにな」

そう言って井上先生はそそくさと職員室の方向へ向かって行った。

「ねぇ、雅也。いつ帰ってくるの?」

僕は訪ねた。ひまわりの置いてある机に。

雅也はもう、この教室に来ることは無いのに。あるいは、幽霊になればここに来るのだろうか。なぜなら雅也はもう、その生涯を終えたのだから。


ー1年前ー

「健二!遊ぼうぜ」

この低い声に明るいテンション、雅也だ。

「今行くね!」

廊下から聴こえる雅也の声。それに僕は反応して教室を出た。今の時間は11時50分。3時間目が終わり、昼休みの時間だった。

雅也は身長150cmの小柄な体型で、いつも髪がボサボサの少しやんちゃな少年だ。

「今日何して遊ぶよ?健二の好きなサッカーでもするか?」

雅也がそう言った瞬間だった。

「うわ、くっさ」

廊下に響き渡る大きな声で女子が言った。この声は、いじめっ子で有名な渡辺 美穂(わたなべ みほ)の声だ。

「マジきもいわぁー はやく死ねよ」

渡辺 美穂は雅也を見ながらそう言った。さっきまでの明るいテンションとは裏腹に、雅也は真顔で下を向いていた。

「どうしたの?雅也、大丈夫?」

僕が心配して訪ねると、雅也は険しい表情をした。

「え?まさか雅也と仲良い感じ?やめな?」

渡辺 美穂は僕に話しかけてきた。顔が整っているからなのか、不思議とムカつかない。

「雅也は小学校からの親友だからね。仲良いよ?」

僕がそう答えると渡辺 美穂は悪そうな顔で笑った。まるで隠し事をしている幼稚園児のような顔だ。

「そっかぁ!じゃあ楽しんでね〜。2人ともさ、あとで私ともあそぼうね!」

陽気な渡辺 美穂の声は廊下に響き渡る。

「お、おう。ま、またな。」

雅也は下を向きながらそう返した。

「あ、雅也さぁ、さっき死ねって言ったけどあれ嘘だからね!」

渡辺 美穂はまた悪そうな顔をして言った。

「い、行こうぜ。」

元気のない雅也に僕はついて行った。


ー放課後ー

隣のクラスの雅也のところに僕は向かった。

「きゃーー!!!」

女子の悲鳴、雅也のクラスからだ。

......バン!

僕は急いで教室のドアを開けた。目の前には衝撃的な光景が広がっていた。目から溢れ流れ出る血と、手に持っている眼球のような赤黒い小さな球体。左手に持つハサミに、痛がりながら謝る男。それはあまりにも非現実的で、ショッキングな光景だった。

「ィ゛ダイ゛ゴメ゛ンナ゛サ゛ィ゛」

少し分かりずらいが、この低い声は雅也の声だ。僕は訳が分からなかった。どうして雅也がこんな、頭が破裂しそうだ。そう思った。


ー1ヶ月後ー

雅也は自殺した。自宅のお風呂場で手首を切って死んだ。原因はいじめのせいだ。自分で眼球をくり抜いたのもいじめが原因らしい。いじめてたのは渡辺 美穂だ。

「なんかさみしいよぉ けんくん〜」

けんくんとは僕のことだ。渡辺 美穂は僕のことをそう呼んでいる。

「美穂は甘えん坊だなぁ、大好きだよ」

僕と渡辺 美穂は付き合っている。ちなみにここは渡辺 美穂の自宅だ。渡辺 美穂は中学生でもう一人暮らしをしている。

「ねぇ、健二。セックスしよ」

「シャワー浴びてからね?先に浴びててよ」

「やだぁ 一緒がいいの〜」

「じゃあしないよ?いいの?」

「んー、わかったぁ。じゃあ入ってくるね!」

何気ない会話をすると美穂はお風呂場に向かった。美穂がシャワーを浴びているのを確認してすぐに僕は台所に行った。

「これがいいかな」

包丁を取り出した。渡辺 美穂を殺すためだ。僕は人を殺してみたかった。その理由を渡辺 美穂は作ってくれた。感謝しないと行けない。

「ありがとう」


ー3時間後ー

僕は煙草を吸いながら渡辺 美穂の死体を眺めていた。中学生女子の裸を目で堪能しながら吸う煙草ほど美味いものはない。

..................

煙草を吸い終わった僕は、ふとあることを思い付いた。

「よし、犯すか」

渡辺 美穂の遺体を目の前に僕は産まれたままの姿になった。まずは中学生女子の胸を揉む。柔らかい。次におまんこに指を入れようとした。

「あれ?全然濡れないじゃん。あ〜、そっか死んでるんだもんな」

僕は笑ってしまった。死んでいるんだから濡れる訳がない。

「ローションでも買ってくるか。あ、この身体じゃ、買えないかな?」

......シュルん......

「よし、これなら大丈夫だろう。」

お風呂場の鏡を見た。そこには26歳の男の姿があった。見覚えのある体格だ。

「やっぱこの身体はいいなぁ、筋肉がかっこいい。まるでボディビルダーだ。あ、そういえば体育の井上、今元気にしてるかな......?あの世で。」

僕はこの世界で殺した人になることが出来る。あの頃の記憶......。井上先生や、渡辺 美穂が生きている頃の記憶。1年前、1ヶ月後、3時間後、振り返ったその時間は空想の時間に過ぎない。

............................................................

なぜなら僕は、タイムリーパーだから。



第1話(完)



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