第3話 真山のトークゾーン

 武田の告白が終わり、CM明けで真山のトークゾーンとなる。

ブースの外は告白が始まった時と打って変わり、静まり返っている。

ひと際目立って聞こえるのは武田の泣きじゃくる声だけだった。

武田は告白を終えた後もブースの椅子に座っている。


ジングルが流れ、真山のトークが始まる。


「いやー、武田さん。衝撃の告白でしたね」


武田は答えない。


「でもね、私も人を殺したことがあるんですよ。それを聞いてもらっていいですか?

私は少し前に結婚しましてね。あのー、このラジオでもお話させていただいたんですけど。で、最近子供も生まれまして。いわゆる順風満帆ってやつで幸せの絶頂にいたわけですよ。でも、奥さんが妊娠している時にちょっとですね、刺激が欲しくなりまして、いろいろ遊んでいたわけですよ。まあ、冒頭のオープニングトークでも話しましたけど。そんなこんなで、遊んでいる時に彼女ができまして。彼女は私のファンだったんですよ。たまたま道で声を掛けられまして。『私、真山さんのファンなんです』なんて言うもんですから、顔もかわいかったですしよく遊んでたわけですよ。でね、その子とよく遊んでたわけなんですけど、その子が芸能人ということを知りまして。で、その子がすごく売れていくわけですよ。さすがに私もその時は焦りましたね。これがバレたらまずいと。しかも、その子が売れるにつれてかなり積極的になってくるわけですね。おそらく売れて自信が付いたんでしょう。最終的には『奥さんと別れて』って脅してきましたからね」


そう言いながら真山は笑っていた。

先ほどとは比べ物にならないほどブース外がざわついている。

武田も下を向き続けていたが気づけば泣くのが止まっていた。

真山は続けた。


「勘の良い人なら気づいているかもしれないですけど、その彼女というのがね、あのー、先ほど武田さんが話していた新山さんなんですよ」


その一言で武田は顔を上げた。

は?新山と真山が付き合っていた?

武田は何が何だかわからなかった。


「いやいや、武田さんのその表情になるのもわかりますよ。そうです。新山さんを殺したのは私なんですよ。正直びっくりしました。まさか今日こんな話になるなんて思ってもいませんでしたから。ニュースで事故死になっていた時もめちゃめちゃホッとしていましたからね。でも、武田さんが今日その話題に触れて、しかも『自分が殺した』なんて言い出すわけですから。あれはね、私が殺したんですよ。さっきも言ったように彼女にはうんざりしていたんです。で、ある日収録でスタジオが一緒だったんですよ。それがさっき武田さんがおっしゃっていた日ですね。で、私は彼女に楽屋に呼ばれていたんですよ。脅されてね。で、楽屋に向かうと、ちょうど武田さんが部屋から出てくるのを見たわけですよ。私にはわかりました武田さんが焦っているのが。で、彼女の部屋に入ると彼女が倒れているわけですよ。すぐ察しました。で、チャンスだと思ったんです。彼女がここで死ねば邪魔されないって。そこからは、倒れている彼女を起き上がらせて、机に向かってドンッとしたわけです。つまり、私が最終的に殺したわけです」


そう言い終わると、真山は最後に一言言い残した。


「武田さんが捕まったら私もこの業界でやっていけないですから」

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