大統領の決断

大統領は暇を持て余していた。




すべて側近がやってくれるので言われた通りに動くだけで良い。


彼の趣味は、北京への核爆弾スイッチを宙に投げてキャッチする事だ。




もし、落として発射されたらというハラハラが病みつきになっていた。


人は刺激には慣れてくるものだ。力の限り宙に投げて、天井に激突した時、事件は起こった。




今の原子爆弾は1500倍の威力だ。北京は跡形もなく消えた。




大統領は言った。


「何者かが私の体に入ってスイッチを押させたんだ。」




誰も、大統領を疑う者はいなかった。




アメリカ外務省はすぐさま中国へ事情を説明した。




中国も微塵も疑う事はなかった。




両国はオンラインで協議した。




アメリカと中国が戦争して喜ぶのは、ロシアだという結論が出かけた。

しかし、真犯人がここまでの展開を予想できたなら、ロシアが無くなって喜ぶのはアメリカだ。




結局、結論は持ち越された。




大統領は、やれやれと、何事もなく責任を追及されずに済んだ事を一人で祝った。


彼は、北京市民200万人が亡くなった事など、どうでもいいようだ。




あの世では、北京市民200万人の霊が閻魔大王に事情を聞かされて激怒していた。


200万人の怒りが大統領一人に向けられた。






神によって、マザーテレサのいう「最大の不幸の刑」に処された。


「この世の最大の不幸は 貧しさや病気ではありません。 だれにも自分が必要とされない、と感じることです。」






大統領はそのまま大統領で居続ける事になった。

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