信頼されない人生

敦は49歳、昔からいい加減な性格で人から信頼されたためしがない。


人当たりは良いので今までは何とか営業職で食い繋いできた。結婚したことはなく、付き合った人達を含め、いつ夜道を襲われても不思議ではない。但し、リスクを冒してまで殺す価値のある人間だと思われればの話だが。


敦の中の魂は苦しみにあえいでいた。なぜなら、魂は人からの信頼などプラスの想いを受け、成長するからだ。子供を見ると誰でも温かい感情を向けるのも、理にかなった行動なのだ。


いくら、悪い環境で育った魂でも、彼がこの年齢で人から信頼されるように、心を入れ替えるとは思わない。後は、これ以上、状況が悪くならない内にあの世へ行くだけだ。


魂は、脳が自ら考え行動する「自由意志」以外の生命機能はコントロールすることができる為、何時でも敦を殺すことができる。



50代で急に死亡率が上がる真の理由は、こういう事だったのだ。



ある日の就寝前、彼は自らの魂によって脳卒中で殺されようとしていた。


ちょうどその時、彼に復讐をしようと昔の彼女がやってきた。

彼女は予想外の状況に思わず救急車を呼んだ。彼は辛うじて一命をとりとめた。



彼は植物人間になり、悪行ができなくなって、殺される必要もなくなった。

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