第2話

 次元の狭間に存在する酒場——時の忘れ物亭には、その名に違わず、時の流れから零れ落ちた雫のような人々が憩っている。

「ねえ、マスター、同じカクテルをもう一杯。どうか私と一緒に乾杯してくださいまし♡

 そうね、明日からはまた、太陽が世界を照らす時間が延びてゆくことのお祝いに」

 女は、カウンター席に腰掛けると、上目遣いに、艶っぽい唇をハート型にしておねだりした。

 次元の狭間には、明確な時の流れなぞ存在しない。しかし、女はその艶やかな唇で、などと言ってのける。

 彼女は、ここでは珍しく、還るべき世界を持つ客人だ。そしてその世界は、冬至を迎えているのだろう。

 マスターは、薄暗い店内でも着用しているサングラスの奥で、静かな笑みを浮かべて、承諾した。

「ポムは、陽光や春が恋しいのか?」

 若かった頃よりは随分と渋みを増した声で、マスターは客に問い掛けた。

 ポムと呼ばれた女は、赤いナースキャップに、スカート丈の短い白衣、そして、黒いガーターストッキングといういつもの出立ちだ。これはこれで酒場に勤務できそうなファッションであるが、彼女は、これを普段着として、エルジオン医科大学に通っているのだ。そして日夜、創薬に勤しんでいるのだ。

「おい、マスター、何か甘いツマミを頼む。このお姉ちゃんお手製の資料を読み込むには、やたらと頭ぁ使うからな!」

 今日のポムには連れがいた。ハーディーは、ポムの隣に座っており、彼女とマスターの会話に横入りした。時に頭を掻き毟りながら、真剣な表情で紙媒体の資料と睨めっこしているのだ。

 その表紙には、“For Your Eyes Only”と手書きしてある上、ポムのルージュのキスマークまで添えてあるのだが、ハーディーは、そうした演出に鼻の下を伸ばすのもそこそこに、資料の中身と己の頭脳との泥仕合へと突入したのである。

「マスター、ご質問に答えますわ♡私は、そりゃあもう、いつか我が世の常春を謳歌したいと思っていますけれど、太陽に特別肩入れしているわけではありませんの。ただ、月が……古代の月の翼人が大っ嫌いなだけですわぁ〜っ!

 そう、古代の月で翼人どもがやらかしていたという魔素呼吸!酸素が無ければ魔素を吸えば良いではないか!……などと、どこからともなく不埒な哄笑が聞こえてきそうでしてよおぉうっ!

 もう!彼らは、例えば呼吸困難を自覚したら、血中の魔素飽和濃度を測定していたとでもいうんですの?酸素飽和濃度ではなくて!……ただ、真相について説明を求めたくとも、滅亡した死人に口無しですからねぇえ……」

 いささか物騒な言い回しが混じるのは、早くもアルコールが回り始めているせいなのか?それとも——ポムという名前は爆弾のようだなどとしばしば言われるが——彼女の名前以前に人格が爆弾じみているせいだろうか……

「おい。きみも医師の、科学者の卵だろう。想定外の事象に遭遇したからといって、ただ忌み嫌うばかりというのは、古代人未満の猿が泣き喚くように聞き苦しいぞ!」

 辛辣な言葉が、ポムの右耳を刺した。

 ハーディーはポムの左隣に座っている。彼女の右側にはまた別の連れが座っているのだ。

「あ〜ら、セティー捜査官。忌み嫌うばかりではないからこそ、お手元のその資料を作成できたんでしてよぉう♡」

 セティーもハーディーと同内容の資料を吟味している最中だった。

 そして、ポムの言ったことも事実だ。

 ポムは、セティーやハーディーが職業柄使用せざるを得ないとある薬物に、魔素を添加した改良版を生み出して、既に大規模に展開した治験についてまとめた資料を彼らに提出したのだった。

 彼女は、治験を取り締まる法律や、監督する倫理委員会なぞそもそも存在しない時代へと赴き、ちゃっちゃと十分量のデータを収集したのだ。

 もっとも、その薬物は治療薬ではないから、治験と称すること自体、不適切かもしれないが……

 そして、セティーの組織とハーディーの組織のどちらか一方、より高額な報酬を提示してくれた側に、その薬物を優先的に提供すべく、今回の密談をセッティングしたのである。

「おい、今初めて聞いたぞ、その話……」

 マスターの渋い声が、僅かにわなないた。

「もう♡だって、予め言いふらしたりしたら、密談になりませんでしょう?それに、こちらの殿方お二人は、義兄弟であるとは言え、『ニャミオとジュリニャット』さながらに、逢瀬を憚らなければならない運命なんですものぉおうぅ♡」

 義兄弟は揃って酒の霧を吹き、それぞれに小さな虹が掛かった。この次元の狭間で、いったい何をアルコール消毒しようというのだろう……

 ただ、あれこれ言い返したところで、ポムのような恋愛至上主義者は、自分にとって好都合な脳内変換しかすまい。

 義兄弟は懸命に無視を決め込み、マスターもまた黙って二人分の飲み物を作り直したのだった。

 ポムは、潤んだ瞳で、そんなマスターを見つめた。自分のと同じ色をしていたグラスを、彼は既に飲み干している……

「ねえ、マスター、教えてくださいまし♡二十代の頃のアルドって、どんな感じでしたの?」

 彼女の仲間であるアルドは今、十代の最後を生きている。

「俺から話すわけにはいかないな……おい、もしかして、俺に口を割らせようとして、一杯飲ませてくれたのか?」

「うふふ……一杯食わせたとお思い?まあ確かに、アルコールは初歩的な自白剤ですわねぇ。今時の代物よりはよっぽど非効率的ですけれど……」

 ポムは、切なげに吐息した。

「マスターがお話してくださらないなら、少し私の話を聞いてくださいな♡

 実は私、今日は我らがエルジオン医科大学付属病院のイベントから逃げるようにして、ここへ参りましたの。

 そう、『冬至の祭り』から……

 昔々、人類が地上で農耕に勤しんでいた時代、いくつもの文化圏で太陽は神格化されて、冬至の時期には太陽の復活を祝う祭りが行われていました。

 今時の病院の小児科では、そんな昔の祭りを形ばかり再現して、太陽を擬人化したキャラに扮した医師や看護師が、赤い服を着て、笑顔を振り撒いて、入院病棟の子供たちにプレゼントを配り歩くんです。

 もちろん、闘病によるストレスを緩和する効果を狙ってのことですわ。

 けれど、ホスピスに入院した、余命幾許もない子供たちにも笑顔で接することになる。

 その子の両親が、お互いの血統の負因を巡って罵り合っていたり、あるいは、『あの子が天国へ行ったらこっちはこっちで旅行にでも行かせてもらおう』だなんて、こっそりパンフレットを捲ったりしていてもです。

 小児科志望の医学生にとっては、乗り越えなければならない通過儀礼ですし、親愛なるモイナは、こうしている今もボランティアとして奮闘しているはずですわ♡

 ただ、私は……そもそも私には、ボランティアのお誘いすらなかったんですけれどねぇ、うふふ♡」

 話の終わりはなんだか肩透かしだった。しかし、もしもポムが作り笑顔で小児科病棟を練り歩いたりしたら、確実に希望以外の何かをばら撒くホラーヒロインの様相を呈することだろう。

 一方で、モイナことメロディが奮闘している有様を、マスターは容易に想像することができた。

 死の床にある子供たちにも、きっと懸命に寄り添おうとして……思わぬ空回りの果てに体育座りで落ち込んでいなければ良いのだが。

「ねえ、マスター、もう一度お訊きしますわ。二十代の頃のアルドって、どんな感じでしたの?」

「はは……何度訊かれても、そいつは答えられないな」

 ポムは唇を尖らせた。

 そして、ハーディーは、眉を片方だけ吊り上げたのである。

 だが、次に言葉を発したのはセティーだった。

「おい、ここに記載されている被験者Aってのは……」

 ポムが作成した資料には、治験に関する十分量のデータを解析した結果だけではなく、件の薬物を投与した個別の事例についても何例か詳述されているのだ。

「ああ、それはもちろん……」

「いや、いい。気にしないでくれ」

 セティーは、努めて感情を押し殺そうとした。露に反応してしまった自分自身にも腹を立てながら……

 それは、アルドの名前こそ伏せて被験者Aとしてあるが、サウンドオーブに録音されていた音声データをご丁寧に書き起こしたものだった。

 当然、セティーと枢機院の関係性について語られおり、ハーディーにはまだ知られずに済んでいた事項もちらほらと含まれているのだ。

 全く、悪いのはアルドではなく、彼に一服盛って喋らせたポムである。

 音声データが流出しないように保証するなどとぬかしていたが、このぶんでは、書き起こした紙媒体はまた別物だなどと、詭弁を弄するつもりかもしれない。

 ところが、ハーディーが言ったのだ。

「おい、こっちにゃ、被験者Aなんて載ってないぞ?」

 ポムは、唇をハート型にして微笑んだ。

 それは、セティーにとっては少々意外なことだった。今しがたの推論を修整する必要が出てきた。

「実は、お二人にお渡しした資料の内容は、全く同一というわけではないんですの。

 ハーディーさんのお手元の資料では、被験者Aについては割愛させていただきました。

 その代わり、最終ページに、セティー捜査官の資料には無い被験者について詳述してありますわぁ〜♡」

 どれどれと確認したハーディーが、危うく資料を取り落としそうになった。セティーは、それを流し目で見逃さなかった。

「義兄さん、さては、『被験者H』でも載っているのかい?そっちには」

 ハーディーは、義弟の勘の良さに戦慄した。

「義兄さん、顔色が悪いね。それに脂汗をかいている。見苦しいから、せめてどっちかにしてくれないか」

 ハーディーは、職業柄、真っ当な病院の世話には極力ならないことにしている。真っ当な病院というものは、COAから捜査協力を要請されると、データを開示してしまうからだ。

 ゆえに、先日ポムを頼ってこっそりと受けた人間ドックの結果が、そこに思いがけず添付されていたのである。

 セティーは、こめかみに人差し指を当ててから、おもむろに前髪をかき上げた。

 実は近頃、合成鬼竜の艦内に、人間用としか思えない医療機器や検査機器がどんどん増加していることに気付いて、不審に思っていたのだ。

 裏社会に生きる人間たちのご用達だとしたら説明が付く。

「ポム、これはあくまで一般論として教えてほしいんだが、酒と甘い物が過ぎたら、何が起こる?」

「そうですわね、あくまで一般論ですけれど、まずは中性脂肪が上がるでしょう」

(どうせガッツリ上がってますってーの!自己新記録だぞ!)

 ハーディーは、その叫びこそ心の内に止めたが、うっかり血の涙を零しそうになってしまった。

 中性脂肪以外にも、ポムがわざわざ赤ペンでチェックしている項目が複数あるのだ。

『アブナイ男は魅力的かもしれませんが、数値的にアブナイのは論外でしてよ♡』などと、余計な感想まで添えて。

 ハーディーとて、人間的にアブナイ女にそこまで言われたくはなかった。

「どうやら、彼女に一杯食わされて秘密を漏洩したわけではなく、単に自主的に過剰に飲み食いしただけらしいな。良かったじゃないか。完全なる自己責任だ。他人を恨んだり、他人に恨まれたりせずに済む」

 義弟にまで、慰めたいのか追い討ちを掛けたいのかよくわからないコメントをされてしまった。おそらくは両方なのだろうが……

「おい、てめえら、今日はクスリを買い付けるか否かの話だろうが!」

 ハーディーは、いささか荒くたい口調で、本日の本題を確認した。

「ポム大先生によれば、改良版の自白剤ってのは、効果は従来版と同等かそれ以上!加えて、魔素を配合したお陰で、厄介な副反応である呼吸困難が起こりにくいってぇ触れ込みだったな!」

 自白剤は構造的に麻酔薬と類似しているため、投与により呼吸困難を惹起することがあり、放置すれば死に至ることもある。そこが最大の難点なのだ。

 そのため、エルジオンにはその運用を規制する法律が存在するのだ。

 しかし一方で、翼を持たない人間であっても、魔素を投与すれば呼吸を補助する効果があることが、ポムの研究によって判明したのだ。

「俺の目の前でその改良版を盛られたこの人は、確かに呼吸困難は起こしちゃいねぇが、ポム大先生の質問に答えもしない。こりゃあいったいどういうこったぁ?」

 ハーディーの指先は、まっすぐにマスターを差していた。

「え!?オレ、自白剤なんて飲まされてたのか?いつの間に?」

 マスターは、よっぽど驚いたらしく、口調がアルド時代のものに戻っていた。もちろん、声は渋い中年のままであるが……

 ハーディーは、大きく肩をすくめた。

「ポムが、あんたと一緒に乾杯したいっつったろう?俺はピーンと来たから、ポムが一服盛りやすいように、わざとあんたにツマミを頼んで注意を引き付けたんだ」

 マスターの脳裏に、つい先程のその忌まわしき連携プレイの光景が、セピア色の映像として再生された。

 自白剤代わりに酒を飲まされたのかもしれないと思いきや、そのものをしっかりと盛られていただなんて……

「アルドにはこの自白剤はよく効いたらしい。そして、自白する合間に笑い声まで立てていたから、呼吸困難は当時から起こさなかったと考えられる。月での魔素呼吸にも適応できただけのことはあるな。

 しかし……ポム、アルドに何回飲ませた?連用すると耐性を生じて、自白しにくくなるんじゃないのか?」

 そう指摘したのは、セティーだった。

「この先アルドに何百何千回飲ませるかなんて、今訊かれても私にもわかりませんわよぉおう!

 けれど、耐性を形成した可能性は否定できませんわねぇ」

 ポムは、そこは率直に認めたのだった。

「ただ、改良版の自白剤について、画期的な使用法をご提案したいと思いますの。

 どうか『被験者V』の項目をご覧くださいまし♡」

「「「Vって……」」」

 男三人が、図らずも声を揃えたのだった。

 カブト虫によく似たシルエットが、彼らの脳裏をよぎったのである。

「ええ、ご想像の通り、人間との直近の和平会談に臨んだ、魔獣側の代表のことですわぁ〜♡」

 ポムは語る。ミグランス城での決戦後、定期的に開催されている和平会談の日時を知るのは容易いことだったと。ミグランス王国側は、警備上の都合か、はたまた国民の動揺を防ぐためか、会談の日時について事前に公表することを避けていた。その一方で、業務の内容は伏せた状態で、まとまった頭数の医者を臨時雇いすべく募集していたからである。

「きっと、カブト虫沙汰をはじめとする様々な暴力沙汰を警戒していたんでしょうねぇ。

 せっかく医師団に紛れ込めたんですから、パ〜〜ッとやらせていただきましたわぁあぁあ♡」

「「「何を!?」」」

 セティー、ハーディー、そしてマスターが、またもや異口同音に尋ねたのである。

 ところがポムは、「ああ、なんだか昂ぶって参りましたわ!思い出しただけでもゾクゾクするぅ♡」などと言い出して、椅子から立ち上がったかと思うと、腰をグネグネとグラインドして踊ったり、いつも持ち歩いている巨大な注射器を、メジャーバトンのごとくトワイルしたりと荒ぶったのである。

 なかなかにセクシーで見応えのある芸当ではあったが、今男たちが求めているのは、そういった視覚情報ではない。

 やがて、ポムは、巨大な注射器の代わりに、一冊の本を手にしたのである。

「これは、マクミナル博物館の図書エリアに収蔵されている、その和平会談についての記録ですわ」

 ポムは、その古書の一節を読み上げた。

「人間、魔獣、双方の外交官たちが、彼らの本分たる駆け引きをかなぐり捨てた。数々の本音が歌の如く響き渡り、火矢の如く議場を飛び交ったが、致命的な炎上に至ることはついぞなく、むしろ膿を出し切ったかのように合意へと至った。

 会議は歌う。されど荒まず。

 うふふふぉお〜ほっほっほぉおう♡」

 最後のはポムの勝ち誇ったような高笑いであり、断じて古書の記述や謎の呪文ではない。

「『歌う』って、中世の頃から既に『自白』の隠語だったのか……」

 裏社会を生きるハーディーは、どこか遠い目をして呟いた。

「いや、古書の著者は自白剤については知らなかったはずだから、それはない」

 セティーはにべもなく言ってから、ポムのことを睨め付けた。

「確かに、その本の記述は、会議の出席者たちがこぞって自白に精を出して、不審な呼吸困難を起こした者もいなかったと読めるな。

 幸い、暴力沙汰も起こらなかったらしい。

 だが、大きな疑問がある。君は何人に自白剤を投与した?」

「会議の出席者全員に」

 ポムは即答したのである。

「いったいどうやって?医師団の一員として控えていたからといって、出席者全員の飲食物にアクセスするのは困難だったはずだ」

「噴霧しました。画期的な使用法と言いましたでしょう?飲食物になど指一本触れませんでしたわぁ♡」

 その話を理解するのに、怜悧なセティーですら数秒を要した。

 ポムは、間髪入れずに補足する。

「会談の開始直前に、議場内で噴霧したんですのよ♡人間も魔獣も、飲食を回避することはできても、呼吸しないわけにはいきませんでしょう?容易に全員に投与できましたわぁ〜♡

 それに、中世はともかく、今時は、自白剤の経口投与への対策として、吸収阻害剤が出回っていますから……

 でも、呼吸器から浸潤した自白剤には、その手の防御は効きませんわよねぇ♡」

 実はセティーも、本日こうしてポムと会う前に、念のため吸収阻害剤を内服したのだ。しかし、それは確かに、自白剤が飲食物に混入されることを前提とした代物だ。

 そうだ……セティーは思い出した。ポムと一緒に戦ったことは何度かあるが、彼女は、戦闘中に敵味方の区別無く回復と強化と、さらには別系統の弱体化まで施すガスを噴霧するような、どうしろというのだという奇策を好む変人だった……

「ポム大先生、使い勝手が気に入った。噴霧式の自白剤は、俺の組織で買い取ろう。

 中世の和平会談はたまたまうまくいったようで何よりだが、今時の組織の裏切り者どもがちまちまと談合してやがるのをぶち壊すのに使えそうだからな!」

 堂々たる物腰で、ハーディーは宣言した。ただし、人間ドックの検査結果については秘密を厳守してくれよと、その顔には書いてあるようだった。

「そうしてくれ、義兄さん。噴霧式で無差別的に投与というのは、治安当局であるCOAにとっては、むしろ使い勝手が悪いからな」

「潜入捜査官まで巻き添えを食っちまうってかぁ!?」

 ハーディーがちゃちゃを入れた部分まで含めて、セティーは同意した。どうあれ買い手が付いた以上、ポムには納得してもらうしかない。

 ポムの顔には、枢機院絡みで使ってもいいじゃないですかと書いてあるようだったが、セティーは、涼しい表情で前髪をかき上げ、黙殺したのである。


「大変だ〜〜っ!誰か来てくれ〜〜っ!」

 漂い始めていた一件落着感を、男の叫び声がかき消したのは、その直後のことだった。

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