31・小田切遥

 2人の少女が床に正座して、出来上がったコンバット・ローズの姿に見入っている。2人とも、スキンヘッドになっている。互いの髪を、剃り合ったのだ。

 1人がつぶやく。

「きれい……。羨ましいな……遥さんが作った衣装、着られるなんて……」

 もう1人がうなずく。

「本当に……。私がなりたかったな……」

 背後に高橋が立つ。

「じゃあ始めるよ。どちらが先か、決まった?」

「一緒はやっぱり無理ですか?」

「一度に2人は処理できないし、衣装も手作りで時間がかかるから。あっちの人たちが、そう言うんだ。デーモンズのコスチューム、作るのに手間がかかるらしくて」

『デーモンズ』は、サキュバスのコンビという設定のアニメキャラだった。チャイニーズマフィアには、どこかの国の富豪からそういう発注が入ったらしい。

 日本のアニメは、世界中で人気を博しているのだ。

「じゃあ、仕方ないですね……」

 1人が立ち上がった。

「ごめんね。先に行ってるから」

「うん。待っててね」

「また一緒になれるといいね」

「大丈夫だよ。デーモンズは2人で一体なんだから」

 高橋が床にブルーシートを広げる。

「じゃあ、裸になってくれる?」

 死後の処理を少しでも早く進めるために、殺されるときは全裸になることが彼女たちの常識だった。

 ためらいもなく服を脱ぎ捨て、シートに横たわる。

 そして、4体の人体フィギュアが並んだステージを見上げながら言った。

「遥さん、わたしもそっちに行きますね」

 高橋翔太が少女の腹の上に乗り、首に回した両手の指に力を込める。

「すぐ、楽になるからね」

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