185、好意 (第16回Twitter300字小説企画 お題:憧れ)

 新学期。初めて同じクラスになったのに、彼女とはよく目が合った。授業中に僕のことをやたら見つめてくるし、廊下ですれ違えば向こうからあいさつしてきた。勉強のことで相談されたことさえあった。

 それで気にするなという方が無理だろう。授業中、僕はそっと彼女へ手紙を渡した。

 返事はなかった。どころか彼女はよそよそしくなった。目が合っても逸らすし、あいさつもぎこちないものになった。

 僕はもう一度手紙を送った。放課後、喫茶店で話そうと。

 彼女は来てくれた。けれど一人ではなかった。彼女の隣にいたのは、教頭だった。

 思わず立ち上がる。彼女は教頭の背後へ隠れ、怯えた声で言った。

「変な手紙を渡してくるの、やめてください、先生」

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