184、夜明け (第7回Twitter300字小説企画 お題:朝)

「明けない夜はないよ」

 訳知り顔でそう諭してくる友人と喧嘩別れして、俺は居酒屋を出た。

 すでに午後の11時を過ぎていたが、夜の街は喧騒に溢れていた。誰も彼もが楽しそうで、思わず舌打ちする。

 自分だけが不幸を背負い込んでいる――そんな気分だった。

 近くのバーに腰を落ち着けると、俺はしこたま痛飲した。

 ぽん、と背中を叩かれ、目を覚ました。いつの間にか眠っていたようだ。

「看板ですよ」

 スマホを見ると朝の6時を回っている。

 水を一杯もらい、ふらつく足取りで店を出た。

 外は夜だった。相も変わらず喧騒に溢れていて。

 もう一度、スマホを見る。

 午前6時21分。

 俺は頭上を見上げた。

 闇夜にぱっくりと割れた月が、俺をあざ笑っていた。

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