182、プレゼント (第3回Twitter300字小説企画 お題:おくる)

 冗談のつもりだった。

 誕生プレゼント、何がいい? と聞かれ、「君の命」と答えた。そんなセリフ、冗談以外の何物でもないだろう。けれど。

「分かった」

 そう言って、彼女はまあるい球を僕の手に乗せた。

「私の命」

 ガラス玉のようなそれは、角度によってとりどりに色調を変化させた。少々焦りを覚えつつ尋ねる。

「いいの?」

「うん」

 突き返すのも失礼な気がして、けっきょく僕は受け取った。

 以来、彼女の命は僕の手元にある。彼女は相変わらず元気で、僕たちは日々おしゃべりをしたりけんかしたり、旅行に行ったり愛撫し合ったりしている。

 割るとどうなるんだろう?――ふと、そんな考えが浮かぶことがある。

 けれど、僕はまだ実行に移せないでいる。

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