180、写実の向こう側 (お題:探求)
目に映るものをそのまま写し取る――それが画家としての彼の信条だった。
その作品はまさに写実。写真と見間違える者も続出した。
画風に変化が現れたのは、五十を過ぎた頃からだった。次第に風景も人物も輪郭がおぼろとなり、やがて幾何学模様ばかりを描くようになった。
七十の時、彼は大作を発表する。百号のキャンバス一面がべったりと黒に塗りつぶされた絵。
ようやく周りは気づいた。彼は眼病に侵されていたのだ。病状が進行する中、それでも目に映る光景を克明に描いていたのだ。
自殺する直前に描かれた最後の作品は、ひとりの女性の絵だった。思い出の中の女性なのか、それとも死に際に現れた死神なのか。その正体はいまだ謎に包まれている。
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