179、舌打ち貯金 (お題:舌打ち)
彼女の上司は嫌味な人間だった。人が何かミスをするとこれ見よがしに舌打ちをした。
当然、彼女の神経は摩耗していった。
そこで始めたのが「舌打ち貯金」だった。
上司が舌打ちするごとに百円貯金する――舌打ちと貯金とが直結することで、少しでも不快感が減ればと考えたのだ。
意外に効果はてき面だった。舌打ちのたび貯金が増える――それが快感だった。
「で、舌打ちにも彼女が笑顔なので、いつしか上司は舌打ちしなくなった」
「めでたしめでたし、か」
そう言う私に、彼は首を振る。
「いや、彼女はクビになった」
思わず目を見開く。彼はにやり笑った。
「舌打ち貯金がくせになったんだろうな。舌打ちさせるためにわざとミスするようになったんだ」
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