178、ある宿 (お題:観光)
「だから、全部見間違いだって」
言葉を遮るように、口早に私は言った。
「幽霊なんているわけないんだから」
東北のとある宿。必ず幽霊に遭遇するという触れ込みのそこに、友人と私はいる。
時刻は深夜。消灯して久しい客室で、けれど先ほどから幽霊の存在についての力説を延々と聞かされ、私はなかなか眠ることができないでいた。
「とにかく、楽しみにはしとくよ。おやすみ」
強引に話を切り上げ、目を閉じる。何事もなく夜は過ぎ、目覚めた時には障子から朝の光が差し込んでいた。
友人はすでに起きていた。大きく伸びをして、私は彼に笑いかけた。
「な? 出なかっただろ?」
「いや、出たよ」
彼は青い顔で私を見た。
「昨日の夜、誰と話してたんだ?」
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