174、二人野球 (お題:野球)

「中島、野球しようぜ」

 彼女の言葉に、僕は呆れ顔を返した。

「俺、中島じゃないけど」

「もう、ノリ悪いなあ」

 そうして僕らは森林公園にいる。メンバーは僕と彼女、そして彼女の飼い犬のバーナードくん。

 バッグから出されたボールはフェルト、バットもプラスチック製だ。

 バットを構える彼女。右手と左手が上下逆になっている。

「……なんで急に野球?」

「それ、いまさら聞く?」

 僕はボールを放った。全力投球のそれは、けれど見事バットの芯に捉えられた。放物線を描いて青空へ吸い込まれていくボール。

「……うそだろ」

「私の勝ち」

「いつ勝負したんだよ」

 バーナードくんに同意を求めようとしたが、ボールを追ってすでにはるか遠くを駆けていた。

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