175、互視 (お題:水族館)

 投身したことを後悔してはいない。

 孤独だったから。死にたかったのだから。

 川の底に沈んでいく身体。口からぽこり、と泡が漏れる。

 ふと、子どもの頃に行った水族館を思い出す。魚群の中に、いくつも傷がついた個体があった。たぶん、ガラスにぶつかったのだろう。

 かわいそうだな、と思った。水槽の中で死ぬまで見世物にされるんだ、と。

 けれど。

 集客が激減した水族館で魚にうつ症状が出ている、という記事を読んだ。人は魚を一方的に鑑賞しているつもりでも、魚からすれば人の反応を見て楽しんでいる、その刺激がなくなったせいでうつになった――そう結論されていた。

 ぼんやり目を開く。

 徐々に死にゆく私を、無機質な目がいくつも見つめていた。

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