170、夜の街 (お題:夜景)

 店を出ると夜だった。

 一瞬固まったあと、僕は石畳へと降りた。

 人通りはなく、街灯が不安定にまたたいている。もうずいぶん整備されていないのだ。

 明かりはどの家にも灯っていた。どうやら夜が訪れてずいぶん経つようだ。

 路地から二匹猫が飛び出してきて、さっと反対の路地へと消えた。何かに追われるように。けれど、その何かが現れる気配はない。

 どうして夜がくるのか。それは誰にも分からない。何かの前触れだという人もいるし、ただの自然現象だという人もいる。

 いずれにしても。

 大通りを突っ切り街を出る。裏手の丘にのぼると、眼前に街がその全身をさらした。

 夜は好きだ。宝石のように街を彩る無数の灯りを、僕は果てるともなしに見つめた。

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