169、ピークの死 (お題:ピーク)
ピークの真っただ中で、彼は死んだ。心臓麻痺だった。
この世で彼に得られないものはなく、不可能なことなど彼には存在しないように思われた。けれど、そんな彼も自らの死は乗り越えられなかったのだ。
彼の死について、親しい者の間で意見が二分した。
人生のピークに死ねたのだから幸せだ、という者がいる一方、せっかくのピークに死んだのだから不幸だ、とまぜっかえす者がいた。
どうにも論争は収まらず、最終的に高名な霊媒師に降霊してもらうことになった。
暗い部屋の中、やがて降りてきた彼の霊に参加者たちは我先にと質問をぶつけた。
「つまらないことで呼ぶな」
彼は苛立たしげに叫んだ。
「俺は今、こっちでピークを迎えていて忙しいんだよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます