168、登場 (お題:ビル風)
「かっこよく登場したい」
何を言っているのかまるで分からないけれど、いちおうの礼儀として僕は返事をした。
「そうか、がんばって」
「他人事みたい」
彼女が口を尖らせる。いや、他人事どころか意味すら分からないのだけど。
仕方なく説明に耳を傾ける。要約すると、映画の主人公みたいな登場シーンをやりたいのだという。なるほど理解に苦しむ。
そうして僕らはビルの合間にいる。彼女はロングコートに鳥打帽。ビル風にコートをはためかせようという作戦だ。
「俺、ついてくる必要あった?」
「登場シーンには観客が必要でしょ?」
と、ふいに風が吹いた。慌てて彼女がポーズをとる。コートをはためかせ仁王立ちするその姿に、思わず笑ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます