141、聞こえる壺 (お題:声)

 彼はいわゆる呪物マニアだ。世界中からあらゆる呪物を見つけては買い漁る毎日を送っている。

 先日手に入れたのはいわくつきの壺だった。中から怨霊の声が聞こえてくるのだという。

 実際、声は響いてきた。中にレコーダーが仕掛けられているのでは?――当然の疑問が湧いたが、彼はその考えをすぐさま捨てた。

「壺の中からの声なのに、まるで反響していなかったんだ」

 そこまで聞き終えると、私はあらためて目の前の壺を見た。

 何の変哲もない、青磁の壺。けれど、私は彼の話を信じざるを得なかった。

「それで」

 努めて冷静に尋ねる。

「どうしてそうなったの?」

「これにも長い事情があるんだ」

 顔をしかめて――あったらの話だが――壺は話を再開した。

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