138、再会 (お題:ナンパ)

「前にお会いしましたよね?」

 その声に振り返ると、青年が立っていた。年は私と同じ二十代ほどだが見覚えがない。

 困惑が伝わったのか、彼は慌てて言葉を継いだ。

「僕です、僕。忘れちゃいました?」

 そう言われても、まるで記憶にない。まさかナンパか? そう思った次の瞬間、別の声が響いた。

「あ、ひさしぶり」

 見ると、体格のいい男が私に手を振っていた。

「元気だった?」

 そこで初めて恐怖を覚えた。その男もまるで記憶になかったのだ。

「あ、あの時の!」

 と、さらに男がやってきて声を掛けてくる。その後ろから、また別の男。

 そのうち、私を中心に人の輪が出来上がった。見覚えのない顔にぐるりと取り囲まれ、私はただ立ち尽くすしかなかった。

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