137、願い事 (お題:七夕)

「何書いたの?」

 笹の葉に短冊をつけながら、彼女が聞いてきた。

「今度の大会で優勝できますようにって」

 僕も聞き返す。

「そっちは?」

「内緒」

「何だよそれ」 

 彼女はいたずらっぽく笑うだけだった。

 そうして、僕はひとり七夕笹の前にいる。これはストーカーというやつでは?……いや、こっちが情報開示したのだから、向こうもそうすべきだ。

 思い切って彼女の短冊を手に取る。そこには一言。

『見たな』

 僕は天を仰いだ。お見通しってわけか。本当の短冊は別の笹に結ばれているのだろう。がっかりしつつも、来た時より足取り軽く僕は帰路についた。

 誰もいなくなった場に風が吹いた。ふわり裏返しになった短冊には、二人についての願い事がひとつ――

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