135、三尸 (お題:夜更かし)
「庚申の日って知ってるか?」
唐突に彼が言った。読んでいた雑誌を置き、私は答えた。
人の身体に棲んでいる虫が、庚申の日に身体から出てその人間の悪事を天に告げ口しに行く。それを防ぐため、その日は夜更かしをする――
「……だったっけ?」
「俺、その虫を見たことがあるんだ」
子どもの頃、寝てしまった友だちの口からするり出てきたのだという。彼はそれを捕まえようとして――潰してしまった。
「友だちはどうなったと思う?」
「まさか、死んだ?」
「いいや。だけど、虫が死んじゃったからね。もうそいつは、悪事を天に告げ口されることがなくなったんだ」
彼は雑誌に視線を落とした。表紙には『令和初のシリアルキラー』の文字が躍っていた。
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