133、VSチョップロジック (お題:屁理屈)

「いよいよ、だな」

 そう呟く俺に、チームメイトがからかい調子で尋ねてきた。

「緊張してるのか?」

「まさか」

 俺は白い歯を見せた。

『VSチョップロジック』。屁理屈上等、何でもあり。とにかく相手を言い淀ませたら勝ちという、社会人ディベート界のバーリトゥード。その決勝がこれから始まる。

 大きく深呼吸する。三連覇がかかるこの試合、落とすわけにはいかない。

「祝勝会はいつものとこでいいか?」

「ああ、美味しい酒を飲もう」

 グータッチして、俺は決勝の舞台――文化会館大ホールのステージへと歩を進めた。よし、誰が来ても負ける気はしない。

 視界が対戦相手を捉える。

 そこには、俺の嫁が立っていた。

「覚悟はいい?」

 俺は死を覚悟した。

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