132、アメジスト (お題:アミュレット)

 彼女はいつもアメジストのブレスレットをつけている。

 小さな頃から不幸続きだった彼女に、祖母が渡してくれたものだという。

「それから、ひどい目に遭うことはなくなったの」

「気持ちの持ちようじゃない?」

 僕の不用意な発言に、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「試してみる?」

 するりとブレスレットが外された。

 唐突に響き渡る銃声。近くの雑踏からあがる悲鳴。と、頬に痛みが走った。触れた手には血。どうやら銃弾がかすめたらしい。

 度重なる銃声と阿鼻叫喚の中、彼女は悠然とブレスレットをつけた。

 ぴたりと銃声が止む。駆けつけた警官が犯人を取り押さえたようだ。

「ね?」

 すでに、私の頭はどうすれば彼女と別れられるかでいっぱいだった。


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