126、日傘と包帯 (お題:日傘)

「どうしたの、その手」

 彼女が言った。僕の左手にぐるぐると巻かれた包帯のことだ。なるべく平静を装って答える。

「何でもないよ」

 この左手の秘密を知られるわけにはいかない。僕は話題を変えた。

「日傘って、使ってるの日本だけみたいだよ」

 彼女は日傘を差している。空にはぎらぎらの太陽。使いたくなるのも分からないではないけれど。

「海外では、みんな日焼け止めクリームらしいよ」

「ふうん」

 意に介することもない返事に、思わず聞いた。

「なんでわざわざ日傘?」

「日傘差すと強キャラっぽいでしょ」

 ああ、いつもの中二病か。鼻白んだ空気が流れる。と、何かに気づいたように彼女がにやりと笑った。

「で、その包帯は何のためにつけてるの?」

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