124、散策 (お題:鏡)
その日、私は初めての山を散策していた。
案内板によると、頂上まで十五分ほど。夏だったが、木蔭に覆われた山道は存外に涼しかった。
と、道の脇に放置された古い鏡台が目に入った。不法投棄だろう。不快に思いつつ、横を通り過ぎる。
頂上からの眺望はすばらしいものだった。しばし見蕩れた後、意気揚々と復路につく。
ぎょっとした。
大勢の人間が、木々の間から私を見ていた。
いや、それは鏡だった。頂上方向へ無造作に並べられた無数の鏡。先ほどは気づかなかったそれらに私が映っているのだ。
転げるように山を下りた。悪いことが起きるのではと不安だったが、今のところ無事に過ごしている。
けれど、何かが映る気がして鏡は避けるようになった。
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