123、タチアオイの下には (お題:タチアオイ)

「タチアオイの下には何が埋まっているんだろう?」

 脈絡ない彼女の疑問に、僕は適当に返した。

「桜の木の下には死体が埋まっているって言うけど」

 そうして、僕らは土手で発掘作業を行っている。梅雨とは思えないほどにぎらぎな太陽。意識がもうろうとした頃、硬質な音とともに手応えがあった。

 それは小さな箱だった。開けようとする僕を、彼女が止める。

「やめとこ。きっと、大切な思い出の品が入ってるんだよ」

「切断された指じゃなくて?」

「ロマンチックじゃないなあ」

 死体を掘り出そうとしていたくせに、どの口が言うのか。元通りに箱を埋め、聞いた。

「で、どうする?」

「かき氷が食べたい」

 ロマンのない欲望まみれの返事に、思わず笑った。

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