121、一念 (お題:思慕)
思考は現実化する――有名な格言だ。
彼女はそれを信じ、寝る前に願い事を紙に書き出し唱える生活を続けた。愛しいあの人が振り向きますように、と。
そして――願いは叶った。その奇跡を広めるため、彼女は法人を設立した。
「絶対、スズキ君も入るべきだよ」
彼女が言う。
地元の喫茶店。高卒後、5年ぶりに同級生から連絡が来たのだが何のことはない、ただの宗教勧誘だった。私は無言で席を立った――はずだった。
「え……?」
足がまるで動かない。思わず目の前のコーヒーを見る。まさか、中に薬が?
「違うよ」
彼女がにっこり微笑む。
「思考は現実化するんだよ」
その口から、念仏のような呟きが漏れる。スズキ君も入るスズキ君も入るスズキ君も――
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