111、タイムラグ (お題:ストリーミング)

「乾杯」

 グラスを掲げると、モニターの向こうで友人も同じく掲げた。オンライン呑み会である。

 楽しいは楽しい。が、微妙なタイムラグのせいで会話がぎこちなくなることも多々。まあ、仕方のないことだ――そう割り切っていた。

 けれど。

 今日は明らかにおかしい。

 画面の中、「俺」の肘がぶつかって「グラス」が倒れた。反射的に肘を引くと、まだ倒れる前のグラスにぶつかった。テーブルを転がってゆくグラス。

 そう、遅れているのではない。ほんの一秒程、映像が先に進んでいるのだ。

 と、突然「俺」が後ろを振り返った。次の瞬間、その頭がぱっくりと割れ、血しぶきが画面を覆った。一瞬だったが、振り下ろされた鉈が見えた。

 俺は思わず振り返った。

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