108、侵食 (お題:カビ)
世界はゆるやかにカビていった。
新種の黒カビ――あらゆる薬品に対して耐性を持ち、常軌を逸した増殖力を誇る。燃やしてもその灰からふたたび増殖するさまは、まるで不死鳥だった。
それはあらゆるものを侵食していった。紙からプラスチック、コンクリート、自動車、ダイヤモンド、そして人間まで。侵食できないものは何ひとつなかった。
やがて陸地を埋め尽くしたカビは、海へとなだれ込んでいった。どういう理屈か分からない。けれど、それは海をも黒く塗りつぶしていった。
そうして、わずかに残った最後の海面――到達不能極も埋め尽くされ、地球は黒カビですっぽり覆われた。
真っ黒に塗り上げられた地球。その姿は、暗黒の宇宙に溶けて消えた。
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