106、夢の中では (お題:ライオン)

 夢を見た。

 青い空はどこまでも高く、草原は果てがなかった。そして、風になびくたてがみと土を踏みしめる四肢。

 本能のまま、俺は駆け回った。

 鹿を狩りサイの群れを追い越し、疲れたら水場で涼をとった。何者にも縛られずに。そう、世界はどこまでも自由で――

 ふいに目が覚めた。

 硬い床。隅にトイレがあり、反対側には鉄格子。もう見慣れてしまった、夢とはあまりにかけ離れた光景。

 けれど。

 ここでの暮らしもきっと悪くない。食事は与えられ、外敵もない。ただ、ほんのちょっと――窮屈なだけだ。

 と、鉄格子の向こうに長靴が見えた。エサの時間だ。顔馴染みの飼育員が端肉の詰まったバケツを置く。のそり身体を起こすと、俺は前足でそれを倒した。

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