97、ジンクス (お題:大当たり)

「宝くじだ」

 友人の言葉に私はきょとんとした。

 週末の居酒屋。会計を待つ間、先日牡蠣にあたった話をした途端のことだった。

「だからゲン担ぎさ。今なら宝くじも当たるぜ」

「そんなわけ――」

 メールの着信が鳴った。応募していた懸賞の当選通知だった。

「な?」

「偶然だろ」

「おめでとうございます!」

 ファンファーレとともに店員がやって来た。

「あなたは当店一万人目のお客様です。お会計は無料とさせていただきます!」

 店を出ると、友人と頷き合った。

「急がないとな」

 近所の宝くじ売り場へ――二人、一目散に駆け出した。

 と、横からけたたましい音が響いた。振り向いた私の目に映ったのは、猛烈なスピードで迫り来るトラックのライトだった。

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