94、シュレッダー (お題:シュレッダー)

 記憶はない。正確には、意味のない記憶の断片と、直前の光景だけが頭に残っていた。

 頭上を振り仰ぐ。真っ黒に塗り潰された空。そこから私は落ちてきた。

 周囲を見回す。僅かな光の中、私と同じ境遇であろう者が無数に蠢いていた。

 絡まり合い、圧し合い、凭れ合う。幾重にも折り重なった彼らは、大地そのものだった。

 これは罰、なのだろうか。けれど、切り刻まれた記憶からは、自分が裁かれる謂を引き出すことはできなかった。

 私は歩き出した。理由はない。ただ、足が勝手に動いた。

 無限のような時間の後、突如大地が揺れ、空が割れた。現れたのは、後光を纏った神の無表情な顔だった。

 すべてが終わるのだ――本能で理解した私は、その場に頽れた。

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