80、未食の美食 (お題:味覚)
「退屈な味だ」
彼の言葉に、私は歯噛みした。
日本を代表する美食家。その彼が、私の渾身のフルコースを切って捨てているのだ。
「ここは百均ショップか?」
粗製乱造、と言っているのだ。その言葉に、理性が吹き飛んだ。
――ならば、食べたことのない味を体験させてやろう。
メインディッシュに出したのは、特製のソースをかけたステーキ。
一口食べ、彼はフォークを置いた。
「ふむ、正統なフォンドボウに醤油を数滴。あとは――」
彼は、私の混入した毒物の名前を言い当てた。
「どうして……」
「食べたことがあるからさ」
ナプキンで口を拭くと、
「なぜか、これまで五度ほど料理に入っていたことがあるのでね」
そう言って、彼はテーブルに崩れ落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます