78、u (お題:憂欝)

 書類作成、洗濯物、食材の買い出し――山積みのタスク。

「憂鬱」

 思わず呟きが漏れる。そう、まるでその漢字のように事態はこんがらがっていた。

「ママ―」

 隣の子供部屋から娘が来た。ひとつ、ため息が出る。

「あれ、どうしたの?」

「憂欝なのよ」

「ユウウツって?」

「楽しくないってこと」

「そっかー」

 部屋に戻る娘。そう、今はそのまま静かにしていて――

「ママ、見てー」

 天を仰いで振り返った私に、娘が画用紙を広げた。

『yuuutu』

「ユウウツって、uが四つも入ってるよ。おもしろーい」

 ぽかんとした。あまりに他愛ない。けれど。

 ふっと、肩の力が抜けた。

「……おもしろいね」

「でしょ?」

 嬉しそうに笑う娘の頭を、私はくしゃり撫でた。

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